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時刻ヨーシ、方向切替ヨーシ、発車。電車はスピードを急速に上げ、間もなく軌道が緩やかに下り始め、徐々に傾斜がきつくなっていく。傾斜角1000分の35。都市と都市生活者の様々な貌(かお)をトンネルの闇と駅の輝きが妖しく繋ぐ。カミソリのように光る二本のレールの上に現代を官能的に描く。第107回芥川賞受賞。
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Posted by ブクログ
無機質な世界の中で決めたルールに従い生きる主人公らが、そのシステムに飲まれて精神に異常をきたしていく。共通するモチーフが読み手にも及ぶ、という面白さは残念ながら感じられなかったが、それでもスケッチのような淡々と描写していく文体と、地下鉄のダイヤグラムにブタの飼育システムといった日常では得られぬ管理性...続きを読むがマッチしているので、興味深く読めた。表題作は第107回芥川賞受賞作。
1992年上半期芥川賞受賞作。同時期の候補作には、鷺沢萠「ほんとうの夏」や、多和田葉子「ペルソナ」があがっていたが、選考委員の得点は本編が断然群を抜いていた。視点人物は一貫して主人公の地下鉄の運転士に置かれている。そして小説の中を流れる時間は(それは地下鉄の、あるいは乗車業務のでもあるのだが)は、極...続きを読むめてストイックに進行していく。読者が眼にする光景もまた地下鉄の運転席からのものだ。強いリアリティに支えられた小説といっていいだろう。また、そうであるからこそ物語後半のシュールな状況と光景が説得力を持つのだ。
無機質に、ただ作業をこなしていく。そんな中で主人公(運転士)に襲ってくる夢と錯覚に戸惑いつつも、どこか非日常を楽しんでいるような様が、可愛らしく思った。
相当前に読んだ。芥川賞受賞作。 ので、色々あいまいだが印象に残る本である。 この世の中で、何があっても規則正しく動いているものは案外少ない。 人間というものは、 気分やら自然の気まぐれやら様々な不確定要素に左右されている。 だから、世の中のほとんどの事柄は規則正しくは進んでいかない。 決めた通りに...続きを読む動く数少ない例としては、時の流れくらいか(は、言い過ぎですかねw)。 そういう観点でみると、 いつも規則正しくレールの上を走る電車というのは、 作者がメタファーの多用により指摘するように、 極めて非人間的な存在でありまたレアな存在ともいえる。 そんな電車というある意味異常な存在との対比で、 人間性とは何か、というものを考えさせられる。 ただ、こういう地味な切り口の本は判りにくさもあり、 残念ながら売れはしないだろう。 でも芥川賞受賞作の中では好きな部類に入りますw
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