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日本の近代文学は湯ぶねの中から生まれた。東に締め切りから逃げてくる先生あれば、西に世を忍び不倫に走る作家あり。温泉は時に彼らを癒し、時に虜にする。夏目漱石、森鴎外から川端康成まで。知られざるエピソードを混じえながら、古き良き時代の温泉とそこに遊ぶ文士たちの交流を描く、異色温泉小説。
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Posted by ブクログ
明治から大正時代の、今では文豪と言われる人々が、何者かになろうと模索しつつ温泉に浸かる話。たくさんの文士が登場してそれぞれがもちろん関連するので、そういう関係を見る楽しみもある。 へえ、と思ったのは、むしろ娘の幸田文かが語った姿しか見てないのでかつては風呂にも入っておらず垢だらけだった田舎者の幸田...続きを読む露伴とか、各国で女を探しているラフカディオ・ハーンとか(笑)。ハーンは東大で面白い講義をするのでかなりの人気があったそうで、それに負けていた漱石が人気ぶりを研究してやっと学生に振り向いてもらえたことなど。 漱石は英文学者なのでどうしても外国人教師から報酬が安い日本人教師に変わる端境期で、ハーンの後釜に漱石のパターンになるのよな。これは高校の頃から気になっていた。『坊っちゃん』の松山中学も熊本の旧制五高もそうだもんね。 ラスト近くは漱石の危機、修善寺危篤の話や葬儀の話などがあり、鴎外ももちろん登場する。やはりこのときの文壇シーンの背骨は、この二人だったのかなあ、と感じた。 彼らの退場と入れ替えに芥川や、川端康成が次世代の顔として登場するのが印象的。 それにしても鉄幹は姑息な奴だよな(笑)。 この作品、それぞれのエピソードが見てきたかのようにやたらと細かい。すごい資料調べたんだろうな、と感心しつつ読んだけれども、あとがきに伊藤整『日本文壇史』がとにかく参考になったとあり、積読なのでやはり読まないとと思った。買っておいてよかった。 わたしも温泉や銭湯に浸かりまくる人生送りたいなー(笑)。 これ、それぞれの文壇スターが目の前で生きているようだし、みんなキャラ立ってるし、とにかく楽しいので、みんな読むといいと思うよ。 ちなみに、タイトルの「ざぶん」はお風呂に入るときの水音だと思うけれども、「ザ・文豪(または文壇)」の略で、ダブルミーニングだと思うの。
タイトルもいいし、一話一話の情景の切り方も上手いものである。明治文学の雰囲気がつまらない文学史よりもはるかに鮮やかに伝わっている、さすがの力量。
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