森林に何が起きているのか 気候変動が招く崩壊の連鎖

吉川賢

２０１９年、オーストラリアで史上最大級の森林火災が発生。５ヵ月間で17万平方キロメートルもの国土が焼失した。近年、温暖化の影響による森林の「異変」が世界中で観測されている。大規模火災が相次ぐのはなぜか。森林破壊がもたらす経済的影響は。豊かな自然を守るため、何をすべきなのか――。本書は、森林生態系のメカニズムから、日本の里山の持続可能な保全策まで、森林科学の知見を第一人者が解説。実効的な気候変動対策を論じる。

• カテゴリ: ビジネス・実用
• ジャンル: 学術・語学 / 理工
• 出版社: 中央公論新社
• 掲載誌・レーベル: 中公新書
• ページ数: 256ページ
• 電子版発売日: 2022年12月20日
• コンテンツ形式: EPUB
• サイズ(目安): 22MB

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森林火災を手ほどきに、世界の、そして日本の森林が置かれている危機的状況について綴った本。コラムとして筆者が実地で経験した小話も折り込まれていて、読みやすい。
森林は多くの機能を通して我々人間に多大な便益をもたらしてくれるが、地球温暖化や社会からの木材の要請といった森林へのストレスは極めて大きく、一度崩壊すればその再生は容易ではないことを強く主張している。持続可能は一種の流行語でもあるが、こと森林の利用においては持続可能性が極めて重要で、場当たり的で収奪的な利用では立ち行かないことが示されている。

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当たり前の事だが、気候や地理的条件などの環境要因によって様々な森林が形成されるということを改めて実感した。森林を取り巻く環境の変化により、どのように森林が変化していくのか、過去の事例を基に説明されている。一つ一つの要因がそれぞれ複雑に絡み合い、森林の荒廃、新たな森林の形成または森林の再生が起こっている。改めて説明されると、豊かな自然を守るということは途方もない労力を必要とすることだと実感した。
もちろん本書は森林科学の知見を幅広く伝える入門書という位置づけであるが、森林だけでなく、資源、農村文化、観光そしてSDGsに関心のある方にはぜひオススメしたい。森林は全ての人間活動に密接に関わっている。
学生時代、著者の講義をもっと真面目に受講しておけばよかったと、今更ながら後悔している。