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※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 日本企業の品質不正事件が相次いでいる。日本に品筆管理を教えてくれたデミングの「マネジメントのための14原則」が収録され、その哲学が凝縮された本書は経営者必読。
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Posted by ブクログ
▫️マネジメントのための14原則 ①より良い製品・サービスの実現に向けて、目的の一貫性を創出せよ。必ずや競争に伍していける存在となり、事業を継続し、雇用を守り、さらに雇用を拡大せんとする高い志を持て。 ②この新たな考え方を自らのものとせよ。われわれは経済新時代に生きている。欧米のマネジメントは挑戦に...続きを読む目覚め、自らの責務を学び、変化に向かってリーダーシップを発揮しなければならない。 ③品質確保のために検査に頼るのを止めよ。最初から品質をつくり込むことによって、大量生産型の「まとめてつくって、まとめて検査する」という検査の必要性をなくせ。 ④一番安い値段を付けた者が勝つという商習慣を終わらせよ。値段ではなく、トータルコストの最小化を狙え。「品目ごとにシングルサプライヤー」をめざして進め。サプライヤーとの間に誠実と信頼を旨とする長期的な関係を構築せよ。 ⑤生産やサービスのシステムを継続的にどこまでも改善することを通して品質と生産性を高めよ。そうすれば着実にコストは下がる。 ⑥当該仕事についてのトレーニングをきちんと実施せよ。 ⑦リーダーシップの何たるかを学び、発揚せよ(原則12と第8章も参照)。「監督」がめざすべきは、部下たちが機械やツールをうまく使ってより良い仕事ができるように助けることだ。製造現場の人々の「監督」も、マネジメント層の「監督」も、いずれも機能不全に陥っている。オーバーホールが必要だ。 ⑧恐怖を駆逐せよ。そうすれば、誰もが会社のためになる働きができるようになる(第3章を参照)。 ⑨部門の壁を打ち破れ。製品やサービスが生産段階で直面する問題、使われるときに直面する問題を予見するためには、研究・設計・販売・生産の人々が1つのチームとしてカを合わせて働かなければならない。 ⑩「不良ゼロをめざせ」とか「一段上のレベルの生産性を達成せよ」と社員らに求めるスローガンや激励を廃止せよ。こうしたお題目は対決的な人間関係をもたらすだけだ。品質が悪く生産性が低いのはなぜか。原因のほとんどは「システム」に帰すべきものだ。つまり、個々の社員の能力の及ばぬところに真の原因があるということだ。 11a工場における出来高の標準(生産ノルマ)を廃止し、正しいリーダーシップで置き換えよ。 11b目標管理型のマネジメントを止めよ。数字によるマネジメントも定量的ゴールもなしだ。リーダーシップで置き換えよ。 12a現場で働く人々からワークマンシップの誇りを奪っている障害物を取り除け。監督者の責任は、数字だけのマネジメントから品質を良くすることへと変わらなければならない。 12bマネジメントの階層にいる人々と技術者からワークマンシップの誇りを奪っている障害物を取り除け。これは特に、年次評価、人事考課、目標管理の廃止を意味する(第3章を参照)。 13教育と、「自分の仕事は自分で改善する」というセルフ・インプルーブメントの一貫性ある活発なプログラムをつくり、人を育てよ。 14社員1人ひとりがこの変革の実現に貢献できるようにせよ。変革は誰にとっても「自分の仕事」であるべきだ。 あるとき、私は生産のワーカー45人と会い、品質と生産性の向上をめざす彼らの前に立ちはだかる障害物に関して、次の話を聞いた。 ●技術的な事柄についての不適切な訓練――「私には自分の仕事が何なのかわかりませんでした」 ●コンポーネントの納期遅れや欠品 ●仕事のやり方についての文書が不適切 ●強烈な「煽り」が入る(そもそも計画が悪い) ●旧い図面 ●設計が不適切(作業完了後の設計変更が手直しや修正に繋がっている) ●監督者が、良いリーダーシップを発揮するに足る知識を持っていない ●ツールや工具が十分にない、あるいは不適切 ●自分たちとマネジメントとの間に、コミュニケーションをとるためのライン(手段)がない ●劣悪な労働環境(冬は寒く、夏は暑く、ガスの吸引も不十分) ●「私の実績がどのように査定されているのかわかりません。人事考課は茶番です」 ●「不良品がサプライヤーから納品されて来て、私の作業を妨げます」 ●エンジニアからの技術的支援を得るのに、随分苦労している。 こうした意見を聞いて、私(ハッケボルド)はその会社のマネジャーとこれらの問題について話し合った。そのマネジャーは、ワーカーが困っている問題に対し、何らかの手を打つと約束してくれた。彼がプレトリアで開催されたあなた(デミング博士)のセミナーを受講したからには、きっと何かを実行してくれると信じたい。 ▫️死に至る病の症例 ①目的に一貫性を欠く。売れる製品やサービスあるから企業は生きていけるのであり、企業が存続してこそ雇用を提供できる。そこに向かって製品やサービスのプランを立て、着実に実行していくべきところ、うまくいかないのは目的に一貫性が欠けているからだ。 ②短期的な利益ばかりを追求し、短期的思考に嵌っている(「一貫性ある目的をもって、事業継続をめざして歩む」の真逆)。敵対的買収の恐怖と、銀行や株主からの圧力がこれに拍車をかける。 ③パフォーマンス評価、人事考課、年次レビュー。 ④マネジメントの流動性。即ち、ジョブ・ホッピング(よりよい職位を求めて転職を繰り返す) ⑤いま目に見える数字だけを使って会社を動かす。知らない・知ることが出来ない数字を考慮に入れることはほとんど、あるいはまったくない。 ▫️リーダーシップの原則 ①リーダーシップ教育を創設し、リーダーシップの責務、原則、方法を定めよ。 ②そもそも良い人を選ぶべく、慎重に人選せよ。 ③人選の後、よりよい訓練と教育を実施せよ。 ④審判ではなく、リーダーを育てよ。リーダーは共に働く仲間であり、日々の仕事のなかで部下の相談に乗り、部下を導いて、部下から学び、部下と一緒に成長する人である。チームの成員は、誰もが品質をよくするために励む。その際、193ページの図5に示すシューハート・サイクルの4つのステップを1つずつしっかり踏んで進むよう、指導しなければならない。 ⑤リーダーは部下の1人ひとりをよく見て、それぞれがa「システム」の管理限界から「良い方向」に向かって外れているのか、b「システム」の管理限界から「悪い方向」に向かって外れているのか、c「システム」の管理限界の中にいるのか、を見定める必要がある。そのために必要な計算(242ページの解説や、第Ⅱ卷第1章の解説等を参照)は、パフォーマンスの測定に数値を使っているなら実に単純である。統計学的に「システムの中にいる人々」を、(「抜群」から「不可」までといった具合に)ランク付けすることは、科学的論理に反しているだけでなく、方針として破滅に導く拙いやり方だ。このことは本章と第11章からはっきり理解していただけると思う。 数値データがなければリーダーが自分の主観で判断しなければならない。リーダーはじっくり時間をかけて部下の1人ひとりに向き合うことになる。部下はこうした対話を通して、自分にはどんな種類の助けが必要なのかを理解していく。優れたパフォーマンスの証として疑問の余地のないものもあるだろう。特許や論文出版、講演依頼などだ。「システム」の管理限界から「悪い方向」に向かって外れている人には個別の助けが必要だ。ここまでにも本書で例を見てきた。後続の各章でも紹介していく。 ⑥「システム」の管理限界から「良い方向」に向かって外れている「極めて優れた人」に金銭の報奨を与えることもあるだろうが、人は金銭よりも承認欲求が満たされたときに、より強く動機づけられるものだ。お金以外のそうした褒賞を欠いたまま金銭の報奨のみを与えれば逆効果になる。⑥「システム」を構成するグループの人々(すなわち、管理限界の範囲内にいる人々)は、全員が会社の昇給規定に従う。例えば年功序列制だ。グループ内の人をランク付けしてランクに応じて昇給させるようなことをしてはならない。前述の通り、同じ「システム」の中にいる人々を1番、2番、最下位といった具合にランク付けするのは、そもそも間違いだ(会社の業績が悪いときは、誰も昇給しないことがある)。 ⑦少なくとも年に1回は、社員1人ひとりと3~4時間かけてじっくり話し合わなければならない。部下を責めるためではなく助けるためであり、個人として持っているさまざまな側面をより理解するためである。 ⑧パフォーマンスについての数字を、「システム」の中にいるグループの人々をランク付けするために使ってはならない。むしろ、リーダーが「システム」そのものを良くするのを助けるために使うべきだ。これらの数字がリーダー自身の弱点をリーダー本人に教えてくれることもある(コロンビア大学マイケル・ドーラン、1986年) 「システム」自体を良くすることは、全員を助けることになり、パフォーマンスの「ばらつき」も小さくなっていく。 パフォーマンス向上を求めて数字を誤用(一つの集団内で人をランク付けするのに使う)しているせいで昇給を受けられなかったり、褒賞を得られなかったりした際、正式に異議を申し立てることができる日が、かくして到来する。 ▫️いま目に見える数字だけで会社を動かす(お金を数える) いま目に見える数字のみに依拠して成功できる人はいない。もちろん、いま目に見える数字は大切だ。給与の支払い、ベンダーへの支払い、納税、債務の償還、年金基金の引き当て、貸倒引当金をはじめとする各種引当金といったものは、どれも大切な数字である。しかし、いま目に見える数字のみに依拠して会社を動かすなら、いずれ会社も数字も失うことになる。実際、経営に必要な最も重要な数字とは、知らない何ものかであり、あるいは、知ることができないものなのだ(ロイド・S・ネルソン、2~3ページ)。だが、成功するマネジメントを目指すなら、知らないことであれ、知ることが出来ないことであれ、必要な数字は手に入れなければならないと思うだろう。例を挙げよう。 ①満足した顧客1人から来る影響は、売上にどのくらいの違いをもたらすか。逆に、不満を持った顧客1人の影響はいかほどか。 「満足したから、もっと沢山買おう」という顧客は見込み客10人分の価値がある。そういう顧客は自分から買いに来る。宣伝も説得も要らない上に、時に友人を連れて来る。 常に顧客に満足してもらうよう努めれば、努力に見合う十分な見返りが得られる。自分の車を気に入っているオーナーは、以後12年にわたって同じ車種の車を4回買う傾向がある、とテクニカル・アシスタンス・リサーチ・プログラム社が指摘している。同社は消費行動に特化したコンサルティング会社だ(在ワシントン)。同社によると、自分の車を気に入っているオーナーは良い話を8人に広める一方で、見掛け倒しの車を市場に出す自動車メーカーには容赦ない。怒れる購入者は自分が経験した車のトラブルを平均15人に話すという(カー・アンド・ドライバー誌1983年8月号、3ページ) ②上流で品質を改善すれば、それ以降の流れの全域で品質と生産性が格段に良くなるはずだ。 ③「これから当社は市場に適合したビジネスを展開し、必ずや事業を永続させる。当社はこの方針を堅持し、経営陣に異動があっても揺らぐことはない」とマネジメントが明確に打ち出してこそ、品質と生産性の改善が意味を持つ。そこで、これらのこと(因果関係)は定量化できるのか。それで品質と生産性がどれくらい良くなるのか。 ④プロセスそのものを継続的によくしていくことから来る品質と生産性の向上はどれほどか(第2章の14原則のうちの5番目)。出来高のノルマを廃止し、代わりに「良い訓練」と「良い監督」を実現したら、品質と生産性はどのくらい良くなるか(第2章の原則6、7、11) ⑤サプライヤーを絞り込んで彼らと共に購買のバイヤーや設計技術者、販売の人、顧客までも巻き込んでチームを編成し、新規部品の設計、あるいは既存部品の改変に取り組んだとして、それによって品質と生産性はどれくらい良くなるのか(35ページ)。⑥技術者、製造部門、販売部門、顧客との間の協力・共助のチームワークを育んだとしたら、品質と生産性はどれくらい良くなるのか。 ⑦年次パフォーマンス評価のせいで生じている損失はいかほどか。 ⑧社員からワークマンシップの誇りを奪っている障害物のせいで、どれくらいの損失が生じているか。 ⑨例えば物流で迷子になった荷物の補償コストの数字であるとか、整備不良による遅延で生じたコストといった数字はどこにあり、どうすれば調べられるか。 ①~⑨のようなことがら(損失・投資・効果)を金額で定量化したいと考える人は、幻想を追って苦しむことになる。大きな効果があるのは確かだが、それは、本書で詳述する諸原則に基づいて品質向上のための活動を続けることを通して、年々会社に蓄積されていくものだ。そうしたものを金額換算で定量化できると考えるのは幻想である。定量化に挑むのはよいとしても、その前に、定量化が可能なのは、こうした効果のごくごく一部でしかないと知るべきだ。 例えば、ある会社の信用審査部門が「概ねすぐ支払ってくれる顧客とだけ取引するよう、適切に審査している」ことを示す数字があった。これは「目に見える数字」だ。その信用審査部門は割り当てられた自分たちの仕事をきちんとやっている。評価で良い点数を取るのにふさわしい。そんなある日、それまでは見え難かった数字に光が当たり、その会社にとって最良の顧客たちを信用審査部門が(顧客間の)競争に追い立てていたことがわかった。トップマネジメントが「トータルコスト」に着目するのが遅過ぎたのである。 品質保証コストははっきり見える数字だが、品質についてストーリーを語ることはない。苦情への対応を拒絶したり先延ばししたりするだけで、誰でも品質保証コストは下げられる。 ▫️マネジメントの助けとなる質問リスト ①aあなたの会社は「目的の一貫性」を確立したか? b既に確立しているなら、その目的は何か?まだ確立できていないなら、確立するのを阻むものは何か? cその目的はこの先もずっと変わらぬものか、それとも社長の交代とともに変わるものか? dその「目的の一貫性(自社の存在意義)」をあなたの会社が既に社内で公式に打ち出しているとして、そのことをすべての社員が知っているか? eその目的を深く信じ、その目的が自身の仕事に実際に影響を与えるまでに至った社員は何人いるか? fあなたの会社の社長は、誰に対して責任を負っているか?取締役たちは誰に対して責任を負っているか? ②aあなたは、今から5年後、自分のビジネスがどこにいてほしいと考えているか? bその「5年後に、かくありたいと願う姿」を、あなたはどのようにして達成しようと考えているか?どのような手段でそこへ到達したいか?(32ページに既述の通り、ウィリアム・A・ゴロムスキーのマネジメントへの問いかけ) ③a個々の品質特性が(統計的に)安定した「プロセス」あるいは安定した「システム」を持っているか否かを、あなたはいかにして確かめるか? bそれが安定した「プロセス」あるいは「システム」であるとして、その安定した「プロセス」あるいは「システム」をさらに改善する責任はどこにあるか?あなたが品質を良くしたいと願い、工場長はじめスタッフ(管理部門や生産技術や保全の人々)、管理者、部門長、現場で実際に仕事をしている人々の誰に訴えても、何一つ良くならないのはなぜか? cそれが安定した「プロセス」あるいは「システム」でないとするなら、(安定したシステムと比べて)何か違うところはあるか?「システム」が安定していない場合、あなたがやろうとする改善は、安定している「システム」に対する改善と比べて、何がどう違ってくるのか? ④a第2章の14の各原則および第3章の「死に至る病」と「障害物」に取り組むチームを確立したか? b原則14に対して、あなたはどのように取り組んでいるか?進み具合はどうか? c調達と生産のチームワークを立ち上げ、育むために、あなたは何をしているか? ⑤aあなたの会社における常習的欠勤は、(統計的に)安定した「プロセス」か? b火災はどうか?(統計的に安定した「プロセス」か) c事故はどうか?(統計的に安定した「プロセス」か) d欠勤や火災や事故が安定した「プロセス」であるなら、その「プロセス」を改善する責任はどこにあるか?(答え:マネジメント) ⑥a生き残るためにマネジメントの変革が必要なのはなぜか? b変化を起こすに足る、十分な人数(クリティカル・マス)の人々がいて、あなたを助けてくれているか? c変化を起こすに足る、十分な人数(クリティカル・マス)が必要なのはなぜか? dマネジメントのすべての階層の人々が皆、その新たな理念を自分のものとして、当事者意識をもって、理解しているか? eマネジメントの中に、「いや待て、よく検討しようではないか」と言い出す可能性のある人はいるか?実際、今もそう言っている人がいるのではないか? ▫️品質とは何か? 品質はエージェント(代理人)の観点からのみ定義できるものだ。誰が品質を「判定(ジャッジ)」できようか。 生産現場で働く人の心のうちには、自分の仕事に誇りを持って、良いものをつくっているという自負がある。悪い品質とは、その人にしてみれば「ビジネス上の損失」であり、おそらく「自分の仕事にとっての損失」という意味になる。「品質が良ければ、会社は事業を続けていけるはずだ」とその人は思う。これは製造業だけでなく、サービス業でも同じだ。 工場長にとっての品質とは、数字を出すことであり、仕様を満たすことだ。しかし、当人が知っているか否かに関わらず、「プロセス」そのものを継続的に良くしていくこと、より良いリーダーシップを絶えず追求していくこともまた、工場長の仕事である。 広告に関する鋭い洞察を一つ紹介しよう。私の友人アーウィン・ブロスの著作『デシジョン・メーキングー統計的意思決定入門』犬田充訳、講談社)の1節だ。 消費者の好みを研究する目的は、「製品を公衆に合わせる」ことにある。一方、広告の目的は「公衆を製品に合わせる」ことだ。 品質を定義しようとするときに、ほぼすべての製品で必ず浮上する問題を、皆が尊敬する先生ウォルター・A・シューハートが述べている。品質を定義する上での難しさは、ユーザーの「将来の」ニーズを測定可能な特性に翻訳する(ニーズを特性で代替的に表現する)ことによって、設計可能にすることだ。設計ができるのなら、その製品が、払う価格に見合う満足をユーザーに与えられるか否かを見極めることができると思うだろうが、容易なことではない。この新製品開発はかなりうまくいきそうだという感触を得たとたんに、消費者のニーズが変化したことに気づく。あるいは、競合他社が似たような製品を出してくる。当該新製品に使えそうな新素材は沢山ある。従来のものより良いものもあれば、悪いものもある。従来のものより安いものもあれば、高いものもあるといった具合だ。 品質とは何か?例えば誰かが「靴の品質」と言うとき、何を意味するのだろう? その人が紳士靴の話をしているとしよう。その人にとっての「良い品質」とは長持ちすることだろうか?あるいは光沢か?履き心地が好いことか?防水性能か?その人が考える品質が何であれ、品質を考慮に入れた上で「適正な価格」であることは望むだろう。 換言すれば、「顧客が重視する品質特性は何か?」ということだ。
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という本が出版されたのが1979年。そこから、1980年代~1990年代初め頃までが日本経済の黄金期と言われている。自動車をはじめとした「モノづくり」の能力で、日本企業は世界を席巻した。当時、日本との競争に苦しんでいたのが、アメリカの製造業であった。 本書の著者、エド...続きを読むワード・デミング博士は、私くらいの年齢でサラリーマン経験のある人なら知らない人はいないと思う。日本に統計的手法を使った品質管理手法を伝授した米国人。日本企業は、デミング博士の教えをもとに、QCサークルやカイゼン活動を展開し、上記の日本経済の黄金期には、モノづくりにかけては世界のどの企業をも圧倒していた。日本は圧倒的な品質とコスト競争力を持つ製品を輸出し、大幅な貿易黒字を叩き出し、日本人は世界トップクラスの豊かさを誇るようになった。 アメリカは競争に負け続けていたが、黙ってはおらず、日本の製造業の強さをモデル化した「リーン生産方式」(トヨタの生産方式、ジャストインタイム等の)を理論化し、日本企業に追いついていく。そして、東欧諸国が資本主義化し巨大なマーケットが誕生し、ICT技術が企業の基盤強化ばかりではなくビジネスモデルを形成するようになり、そこで、アメリカ企業は復活する。一方、日本はバブル崩壊以降、徐々に国際競争力を落としていき、「失われた30年」と呼ばれる時代に突入し、いまだに回復の兆しを見せない。 デミング博士が日本に伝授した統計的手法・品質管理手法はアメリカ生まれのものである。それを本家のアメリカは無視し、博士は日本に根づかせてくれた。アメリカ生まれの経営手法で日本企業はアメリカ企業を圧倒したのだ。逆に、日本の「リーン生産方式」をアメリカ企業が取り入れていくに従い、日本企業は斜陽に陥っていった。皮肉な面白さを含んだエピソードである。
面白い。以下メモ。2点目、3点目は、なるほど、と思った。 ・社員に向けたスローガン・激励・ターゲットを止めよ=皆分かっていることを改めて言われると、自尊心が損なわれる ・一般社員に数字でノルマを課すのは止めよ=平均以上のものは同調圧力で平均近くに収束、平均以下のものは平均以下のまま
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成沢俊子
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