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日常においてはいつも素通りされている豊かな経験の世界がある――。“自明”であるがゆえに眼を向けられることのないこの経験の世界を現象学は精査し、われわれにとっての「現実」が成立する構造を明るみに出す。創始者フッサール以来続く哲学的営為の核心にあるものは何か。そしていまだ汲みつくせないその可能性とは。本書は粘り強い思索の手触りとともに、読者を生と世界を見つけなおす新たな思考へと誘う。
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Posted by ブクログ
自明なもの、時間、自我、他者など、改めて考えてみると正体が掴めなくなるものについて、専門的な学術用語は極力使わずに説明している。当たり前の根底にある現象を正確に捉えようとしたとき、何が言えるかについて丁寧に向き合っている。 めちゃくちゃ難しいことを扱っているはずなのに、読んだ後わかった気にさせられる...続きを読む文体や表現力が凄い。 筆者はこの本の内容をそのまま飲み込むことは求めていない。意識に昇らない自明なものを探りたいなら、この本を足がかりにもっと深みにハマってみなさいと諭されている感じがする。 “自己と他者の重なる領域に自己の意識が留まることは、相当な苦しみを負うからなのかは定かでないが、到底できないことである。だから意識は避難場所としての自己に引っ込んでしまう”的なことが述べてあり、「業を背負う」という表現や罪悪感の正体は、ここにあるんじゃないかと思った。
20世紀以降の哲学を学ぶにあたっては、現象学をしらないと始まらないのだが、これが苦手で、フッサールとか1パラグラフもわからない。解説書を読んでも、最初のほうはわかるのだが、だいたい20〜30ページ読んだところでギブアップしていまうことが多い。(それでも、残りをざっと速読するのだけど) そんな感じで...続きを読む、現象学には、なんか問題意識というか、思考の方向性が合わないという感じがあった。 そういうなかで、最後の期待(?)をかけて、読んでみた。 基本、フッサールの現象学をベースに説明していくわけだが、かならずしもフッサール用語をつかわず、フッサールの説明方法とは違う組み立てをしながら、現象学とはなにかに迫っていく。 出だしはわかりやすい。が、やっぱ数十ページよんだところで、だんだんついていけなくなる。 あ、やっぱまたか〜とあきらめかけたところで、話が、類型、自我、間主観性というところになって、急になにを問題にしているかが見え始める。問題に対する現象学の答えはわかるわけでないが、すくなくとも何を問題としているかがわかり、その問題が自分の問題意識と近いことがわかると俄然おもしろくなる。 現象学は、組織開発とかにも影響を与えているのだが、その接続点のようなものが見えつつあるかも。 この本をもう少し丁寧に読んでいくと、現象学にわたしなりに近づけるかも?
「フッサールと筆者の共同作業」と著者が語っているように、フッサールの思想を著者みずから歩みなおし、著者自身のことばで語りなおした本です。「本質直観」や「超越論的主観性」といった現象学の用語についても、フッサールの難解な議論を参照するのではなく、著者自身の解釈がわかりやすいことばで語られています。 ...続きを読むまず、「物」とはなにかという問題がとりあげられます。著者は「物」を、さまざまな射影の背後にある実体であるとする考えをしりぞけ、さまざまな射影がシステマティックに現われたり現われなかったりする「構造」が、「物」の概念の根本だと論じられます。また「本質」についても、現象の背後にイデア的な実体を想定するのではなく、大きさも色も素材もさまざまに異なる諸現象が「円形である」という本質のもとで、ゼロ距離で結びつけられているという事態から解釈しようとしています。さらに「自我」にかんしては、自明的な経験のなかへの没入から、思いがけない事態が生じるなどして自明性が引き剥がされるときに、可能的な経験のなかを検索して「どうするべきか」を自覚的にえらびとるときに呼び出されるものとして解釈されます。「物」「本質」「自我」のいずれについても、なんらかの実体として解釈するのではなく、諸現象が展開される次元に内在して、それらを「媒介」している機能そのものとして解釈しようとしているところに、著者の議論の特色があるように感じました。 このほか、諸現象が展開される自明性の次元から、反省的主体がどのようにして析出されることになるのかという問題や、身体の「対化」によって間主観性が成立する機序についても解説がなされています。
現象学が自明のことをテーマにするという導入から、現象学のなんたるかの触りを分かりやすく本格的な学術として紹介してくれている良書。
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