埴輪は語る

埴輪は語る

ビジネス・実用
968円 (税込)

4pt

4.4

「王」の権力を見せつけるため造られた、古代の巨大建造物、古墳。そこに据えつけられた埴輪は、古墳を荘厳に見せる飾りであり、家形・動物形・人物形とバリエーションが増えることで多彩なシーンを再現するようになる。盛装した王を中心とした水の神をまつる祭祀のシーン、猪・鹿・鷹などの狩猟シーンなど。しかも複数のシーンは一本化され、立体絵巻のようにビジュアル化されている。治水や狩猟など王の業績をアピールして、治世の正当性を主張しているのだ。大量の埴輪生産を可能にした、工人組織の存在や社会的な“ゆとり”まで、埴輪が語る古墳時代の社会を読む。

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埴輪は語る のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    ◯埴輪の研究の黎明期から説明があり、どう採掘しているのか、どう研究されているのかも知ることができる。大変興味深い。
    ◯埴輪が古墳に並べてあって、祭祀などに使っていた、というなんかの番組で見たような知識でいたところ、古墳時代を通して、埴輪の役割が変わってきたという。
    ◯などなどあるけれども、なにより埴輪が可愛い。写真も多く、古墳との関係を図面で説明していてわかりやすい。著者の本をさらに手に取ってみたくなる。

    0
    2026年01月18日

    Posted by ブクログ

    火山灰に埋もれていたおかげで大量の埴輪が良好な保存状態で残されていた群馬県の保度田古墳群、その調査に当たった若狭徹氏による埴輪解説書である本書は、同古墳群で発掘された品々の解説を序章で展開し、それを元に全国的な埴輪の分布状況、年代特定、埴輪の意義などを論じていくかなり本格的な内容となっている。予備知識なく読んだだけでは理解しづらい内容が多いため、同著者による『もっと知りたいはにわの世界』や朝日新聞出版『楽しく学べる はにわ図鑑』を読んでおくことを強くお勧めする。

    埴輪の発掘において一番重要なこととは何か。私は漠然とそれぞれの埴輪の形状的特徴や想定される年代こそ重要だと思っていたが、筆者は「発掘された位置」こそが最も大事な部分だと述べている。これはその後の展開でわかることだが、埴輪の利用目的がなんであったかを解明するためには、それぞれの個体の特徴を調べるのではあまり意味がなく、むしろそれぞれの埴輪を使って何を表現したかったのかを調べる必要があるとのことであった。これは目からウロコで、博物館に置かれている状態でしか物品にお目にかかることのない我々には想像にも至らないところであった。実際のところ、古墳が王の存命中から建設されていたのに対し、埴輪は王の死後に急ピッチで製作が進められたとのことである。顔の造形や線の粗さもあり、正直あまり質が良いと思ったことのない埴輪であったが、大量生産に適した穴窯でスピードを意識した手法で作られていた事を知って合点が入った。無論「挂甲の武人」のように国宝に指定されている逸品もあるが、埴輪それ自体に価値があるわけではない。むしろ埴輪という形代を使って、亡くなった王の生前の事績を再現することに古代人は重きを置いていたと言ってよい。

    治水や灌漑に関わる水に関わる神聖な儀式、王位の正当性を示す猪狩り、武人として出兵する場面、貴族の嗜みとして鷹狩に興じる姿、こういった王が関わった複数の場面を埴輪を使って演出し、顕彰することが目的であったとするのが著者の主張であり、そのため再現される場面の全てに王を表す埴輪が配置されているという。最初は俄かには信じ難かったが、足を省略して作られている人物埴輪によって表現される場面の全てに両足を持った埴輪が一人か二人のみ配置されているという説明を見る事で理解に至った。王や、それに準ずる臣下など上位の人物のみに全身表現が適用される埴輪の特徴を理解することで、それぞれの埴輪を配置していた理由がはっきりと見えてくるのである。

    埴輪の年代、製作された窯の特定といった専門的な部分の解説も詳細に為されている。製作場所の特定には窯跡から見つかった廃棄品や未完成の品々に残された、埴輪の形成に使ったヘラによる溝の広さをそれぞれの古墳から見つかった埴輪のものと比較することで特定していくのだという。これだけでも気が遠くなるような作業に感じられるが、X線装置を使って土や鉱物の組成を調べたり、形状の特徴を分析したりなど実際はさらに多くの手順を踏んで特定に至るらしい。地方の古墳や埴輪の研究がなかなか進まない話を聞いてなぜだろうと疑問に思っていたが、たった一つの埴輪の特定のためにここまでの手間がかかることを考えれば頷ける話だった。我々歴史ファンは研究者の方にはまったくもって頭が上がらない。感謝の限りである。

    動物埴輪の特徴、特殊器台から円筒埴輪への変遷の流れ、首長クラスの女性の埴輪の解説、大和に反旗を翻した磐井の勢力圏にて見つかった埴輪とは違う古墳の装飾品「石人」についての言及など、埴輪や古墳だけに止まらず、派生知識や当時の勢力図も含めた広い視野を持って展開される主張や解説は強い説得力があり、付け焼き刃ではない本物の知識を得たい人にはうってつけの書籍となっている。著者があとがきで述べていることだが、埴輪を知って「かわいい」と思ったあなた、そのかわいさの奥に潜む深淵の世界に足を踏み入れてみては如何だろうか。その際には本書が何よりも頼れるガイドとなること間違いなしだ。

    0
    2025年10月19日

    Posted by ブクログ

    古墳(古代墳墓)ではなく、埴輪について焦点を当てた良書。埴輪について知りたい、埴輪の図録だけでは物足りない、という人の次の一冊に間違いなく推薦できる。図版も白黒ではあるが充実している。

    0
    2025年02月06日

    Posted by ブクログ

    筆者がかかわった保渡田古墳群の保渡田八幡塚古墳から発掘された埴輪群の復元を通して、埴輪群像が王の葬送を表したのではなく生前の業績を顕彰したものであることを解説。埴輪の形式の発展、埴輪の普及の様子からヤマト王権と各地の王との関係性や地域社会の有様が読み取れることが分かった。

    0
    2021年07月18日

    Posted by ブクログ

    3世紀頃から作られ始めた埴輪は、当初は円筒型のシンプルなものだったが、次第に複雑になり建築物を表すようになり、最終的には人物を模写したものが現れてきている.これらの流れを写真を示しながら解説している.特に人物埴輪から当時の生活様式や社会環境が読み取れるという論説は楽しめた.

    0
    2022年01月11日

    Posted by ブクログ

    埴輪の意味には王位継承儀礼説、殯説、供養説、犠牲説、死後の近従説、他界説、神宴儀礼説など諸説紛々だったが、著者がこの本で述べられるとおり頌徳像説、すなわち生前の被葬者の姿を記念し讃える目的があるのは間違いないだろう。
    保渡田八幡塚古墳をはじめ豊富な事例が示されており、わかりやすいとおもう。

    0
    2022年01月05日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    埴輪に焦点を当てた一冊です。
    埴輪にはどんなものがあって、どのような発展段階をたどり、時期が連動する前方後円墳をはじめとする「古墳」とどんな関係があるのか…
    などなど、埴輪を中心とした古墳時代の様子が
    図版多めに述べられていました。

    歴史事象は、決して簡単に鵜呑みにできるもの
    ではないことはわかっているつもりですが、
    強烈に印象的だったのは、

    「チラ見せの埴輪」でした。

    中では、肩すかしのような戦術だと言われています。きっと初めて見た人は、きっと一瞬息が止まるのではないかと思います。

    この、息が止まって、見ていられなくて、
    気持ちがブレて、たじろいでしまう。
    これが、戦術か…。と変に納得した部分が
    ありました。

    もう一つ言うならば、

    「女子用の馬形埴輪」です。

    鞍の中ほどに、横座りした時に足を置くステップがついているんだそうです。
    今どき女性でも乗馬する時はまたがっていると思うのです。しかしこの時代は、どうやらまたぐ
    などという、ある意味「女性らしくない所作」
    に対する意識が強いように感じられます。

    土偶でも横座りして赤子を抱くタイプがあったと
    思いますが、この精神が通じているのかな?と
    考えました。


    正直この本を読んで埴輪に対する知識も少しついたと感じますし、仏教が導入される以前までの
    アニミズム的な、メイドインジャパンの考え方が
    埴輪や古墳に現れていると思いました。

    古墳を作れるほど妙にゆったりした時代はなかったのかもしれないと感じます…おそらくヒマだったわけではないでしょうけど。


    実際の古墳や埴輪を見に行きたくなりました。

    0
    2023年09月23日

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