あらすじ
「頼むから、出て行ってくれ」――そう夫に切り出されてから約10年、女ひとりで必死に生きてきた。金のためには春も売った。サディスティックな年下男に、美しい体を凌辱されても耐えた。ところが39歳になった私に訪れたのは末期癌の宣告。絶望、怒り、恐怖……ありとあらゆる激情が去ったあと、私は、ある人に赦されたいと強く願った……。女の性の悲哀を描く傑作長編。
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Posted by ブクログ
本書はある女性が自らの人生を振り返る様を描いた小説です。
彼女は生まれついての美貌の持ち主で、学生時代から行なっていた水商売が縁で知り合った男性とデキ婚。
一人娘を得るも新生活に破れ、娘を夫のもとに残して離婚。
その後、再び夜の世界に戻るがかつての様に売れっ子にはなれず、借金にまみれ、出張売春婦へと転落しました。
そして今、末期ガンの宣告を受け、ホスピスで死を待つ身。
その時になって初めて、かつて自らが拒み、後には拒まれる事になった一人娘に会いたい、死ぬ前に一目会いたいとの必死の願いを抱いたのですが・・・
病室の外に見えるヒヨドリの子育ての様子、かつて自分を買った男たちの思い出、死に目に会えなかった父の思い出、母にかけている負担への負い目。
そして・・・娘に会いたい一心で死にかけの体に鞭打って応えた元夫の要求。
がんによる死を宣告された女性の怒り、恨み、そして最期に受け入れる姿を描いており、鬼女、母親失格と散々否定されるであろう主人公の心情に迫ったストーリーでした。
買われた時の回想などもあり、お子様には読ませられない本ではありますが、大人の読者には丁度いいのではないでしょうか。
人生の苦味を感じたい時などにお勧めな一冊です。
Posted by ブクログ
離婚後、娼婦をしていた主人公は、末期ガンになる。ホスピスで死を前に、彼女は赦されたいを願う。
大石圭なので、でもって娼婦してたって設定なので、彼女が回想するのは短い結婚生活と客とのやりとりなのである。
まぁ、それはおいといて…。
普通にストーリー的には、カタルシスがあるべき話だと思うのだけど、なんかそれがないんだよね。
最後に、…なんだけど、それができすぎていて最後の最後にひねりがあるのかと思ったぐらいだ。
結局、彼女は最後まで自分の美貌だけが好きで、自分自身は好きじゃなかったんだろうな。
そして、誰のことも好きじゃなかったんだろう。
自分がやってきたことを、否定しつつも、彼女はどこまでも自己肯定する。後悔はあっても、反省はない。だから成長もない。
堕落を防ぐのは知性、って昔誰かがいってたけど、それって本当だなって思ったのである。
とはいえ、このやるせなさ、反省のなさが、大石圭の魅力だと思うんだ。