あらすじ
あの人と結ばれますように――
祈りとエロスの物語
夫に浮気されたから、もっと美しくなりたいと美人祈願で知られる河合神社を訪れた女(「美人祈願」)。
お酒の神様・松尾大社で、酒屋の女店主と出会った男(「酔いの宮」)、仕事に恵まれるよう手を合わせる売れないタレント(「芸能神社」)
――願いを込めて京都の神社を訪れる男女の出会いと、情愛の行方を艶やかな筆致で描く、官能連作短編集。
解説/木村寿伸
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Posted by ブクログ
短編集
あの人と結ばれますように――
祈りとエロスの物語
あぶり餅とは、きな粉をまぶした一口大の餅を竹串に刺し、炭火で炙って香ばしくし、白味噌ベースの甘いタレを絡めた京都市北区の今宮神社名物の餅菓子です
夫に浮気されたから、もっと美しくなりたいと美人祈願で知られる河合神社を訪れた女(「美人祈願」)。
お酒の神様・松尾大社で、酒屋の女店主と出会った男(「酔いの宮」)、仕事に恵まれるよう手を合わせる売れないタレント(「芸能神社」)
――願いを込めて京都の神社を訪れる男女の出会いと、情愛の行方を艶やかな筆致で描く、官能連作短編集。
Posted by ブクログ
花房観音『美人祈願』実業之日本社文庫。
6編収録の官能連作短編集。まるで三題咄のような設定の短編ばかりが並ぶ。どの短編も、京都の神社、中高年カップル、泥沼の性愛という3つのお題で書いたと言わんばかりなのだが、それぞれテイストと官能度が異なる。
『美人祈願』。まさかオチのある短編とは思わなかった。女の果てしない欲望に玩ばれる50歳の独身男。夫が若い娘と浮気しているので、家出して京都に来た三崎麻也は、もっと美しくなりたいと美人祈願のために河合神社を訪れる。そんな麻也に一目惚れした香坂純一はその日のうちに深い関係になる。
『女の神様』。LGBTのLの世界を描いた短編。大学時代にレズビアンの関係にあった二人のうち一人が男性と結婚するが、離婚して再び元の鞘に収まるという話。今の時代はこういうこともあるのだろうが、少なくとも自分の周りでは聞いたことはない。京都の大学で同級生だった由良と奈々子。二人は恋人同志だったが、奈々子は結婚を機に由良と別れる。10年後、離婚した奈々子は由良に連絡を取り、再会する。
『たまのこし』。後妻業ではないが、歳の離れた旦那に毎晩、夜の営みを求め、死に至らしめたと言われる魔性の女。その魔性の女に翻弄され、深みに嵌まっていく男。離婚して独り身の49歳の朽木朝雄は、父親の死後、父親の再婚相手である42歳の継母の珠世と会う。珠世に請われて、深い関係になる朝雄。
『女の足』。官能小説に有りがちな先生と生徒の関係。家庭を持ちながら、妻以外の女性に魅了されていく男は惨めに見えるが、哀しいことにそれが男の本性なのか。カルチャーセンターで歴史講座の講師を務める倉本は神社で一人の女性の綺麗な脚に目を奪われる。その女性は歴史講座の受講者の一人、咲原葵だった。母親を亡くし、独りで父親の介護を続ける40歳の葵は結婚はおろか恋愛経験も無い処女だった。家庭を持つ52歳の倉本はそんな葵に惹かれていく。
『芸能神社』。星の数ほどいるタレントの中で売れているのは、ほんの一握りの厳しい世界なのだろう。本作の中では唯一、爛れた性愛の世界が描かれない短編。30歳を過ぎても売れないタレントの李梨は、芸能神社と呼ばれる車折神社で必死に祈る。やがて、李梨に舞い込んで来た仕事は……
『酔いの宮』。お酒の神様、松尾大社が引き合わせた男女。こういう良い話の官能小説というのは珍しい。アル中で職を失い、大型スーパーの配送トラックの運転手として働いていた平川道彦は、その仕事も失おうとしていた。スーパーの経営者が配送を外部委託すると言うのだ。経営者が道彦に紹介した仕事は酒店の配送だった。その酒店の主人は夫に先立たれた華絵だった。惹かれ合う道彦と華絵……
本体価格690円
★★★★