あらすじ
サディストの愛人と、マゾヒストの夫を同時に愉しませる女。SM愛好者の精神科医たちの前で、排泄行為をさらす美人女将。商店街のSM寸劇に自ら主演し、剃毛されて悦びの声をあげるスナック・ママ……。ひとの心に封じられた「禁じられた悦び」に目覚め、淫靡な世界に耽溺する人々を描く異色の短編集。
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Posted by ブクログ
2016年、24冊目、再読月明けはコレ。
その筋の巨匠、団鬼六の私小説的短編集、五編収録。
神楽坂物語:神楽坂の元芸者との短い同棲生活を回顧的に綴ったモノ。『不貞の季節』等で見られる、氏の「脆さ」が出ている作品。
楽園:真面目で仕事も出来るが、風采の上がらない男の妻、豪胆な社長の愛人、二つの顔を持つ女の話。物語的にも、官能としても一番良かった。
夜想曲:Sの精神科医二人、Mな未亡人女将、そして「私」はその夜……。次の短編とある意味対をなしているんじゃないかな。ONの方。
SM劇団・紅座:「私」は師と仰ぐ編集者と、大阪の商店街にあるスナックのママ主演のSM寸劇団へと出向く。少し軽妙な文体。前の一編に対して、OFFの方。
外道の女:ヤクザ世界を垣間見ることになった「私」。老親分の妾、織江の過去とは。水先案内人兼解説はヤクザで作家志望の井上。この一編には、官能場面は出てきません。それでも、「興味深い」という意味での面白さはトップ。
基本はあくまで、倒錯官能がベースではあるが、ソレだけではない。氏の意外に人間臭い面。観察眼。そして、きめ細かい表現。それらが、団鬼六の私小説的作品の胆だと、再確認。