惜しい本。あとがきで語っている着眼点は好ましいし、プロット自体はややオリジナリティには乏しいがなかなか面白いものだと思う。
だが、惜しいかな、作者の筆力が釣り合っていない印象である。
物語の転がし方、描写の仕方、心理的変遷の記述、比喩表現。キャラの描き方もそうだろうか。もっとミクロに見るなら、
...続きを読む助詞の選択。挙げたような部分部分でディテールに甘さが見られる。正直に言って、とても素人くさく感じられた。
端的に言うと、たとえば加治間の作戦前の(士気高揚を意図した)口上が上手くない。これから命を懸ける隊員に掛ける激励にしては、冗談が上滑りしている。描写が上手くない一例である。
しかし、新人作家であることを考えれば、素人くささも宜なるかな。物語としては好むところであるし、これからに期待して星四つとしておく。