先日鑑賞したアニメ『かぐや姫の物語』のサブタイトルに「かぐや姫の犯した罪と罰」とあったのであるが、それを語る部分が希薄だなぁという印象を受けた.
アニメの原作でもある『竹取物語』でも、かぐや姫は「月の世界で罪を犯し、それを償うため地上の世界に下された」設定になっている。本書は、神道研究家である筆者
...続きを読むが海外の大学で教鞭を取っていた時に現地の学生から「かぐや姫の犯した罪とは何?」という質問を受けたことがきっかけで、その罪は何であるのかを専門である神道面から考察した良著。
『竹取物語』は、貴人たちの求婚譚(一種の貴種流離譚)、羽衣譚(天女は天地を行き来するために羽衣が必要。竹取物語では、ラストシーンで月からの迎え人に掛けられる月の世界の衣装がこれに相当)、物語成立当時日本にあった真竹とかぐや姫の成長サイクルの類似と竹の神聖性などがミックスされて出来ている。その中で「かぐや姫の罪」とだけあっさりと記載されているのを見て、当時の人は「なるほど」と罪の中身を類推できたのではないか。しかも詳細に書く必要もないまま(書くことが憚られるまま)に。結果として、筆者は富士山浅間神社縁起(神社の成立を語った物語)をメインに、処女懐妊譚や様々な類似した神話・説話から罪とは何であったかを推定している。
肝心な罪の解明への道筋が大雑把ではあるが、『竹取物語』が内在している様々な説話性、つまり取り残された竹取老夫婦の問題、天皇と姫の関係、月に帰る時に激変をみせる姫の感情変化の源泉など、興味深い内容を多々含んでいる点を明らかにしている面白い書物。これを読むと、『竹取物語』自体や「かぐや姫」に対する印象も違ってくるかもしれない。