神道は「日本固有の民族的宗教」であるという見かたをしりぞけ、古代の律令国家による宗教政策においてすでに「神仏習合」の最初のステップが開始されていたことを実証的に示すとともに、その後の神道の形成・変容の過程をわかりやすく解説しています。
古代において、神祇信仰は仏教などと対比されるような自立した宗教
...続きを読むではなく、修験道や陰陽道とならぶ祭祀および儀礼のひとつとして、日本古代の宗教状況の一部を成していたと著者はいいます。さらに中世における神道のありかたについて、著者は黒田俊雄の顕密体制論を参照しながら、「王法仏法相依」論と同様の理論構築がなされ、それが「本地垂迹説」となったと論じられます。吉田兼倶の唯一神道はその具体化であり、権門体制や中央と地方の関係などが絡みあう多元的な中世社会のなかに、神道を位置づけることができるという見かたが示されています。
また、近代の「国家神道」が神道の歴史的実態から乖離したものであることを指摘するとともに、それに対抗して打ち出された柳田國男の一国民俗学的な立場からの神道の解釈の問題点をも批判しています。著者は、柳田民俗学の批判を通じて、戦後の新京都学派による日本文化論への批判にまで議論をひろげて、日本固有の民俗的宗教を求めることに対する疑義を提出しています。