著者の平岩俊司氏(1960年~)は、東京外大朝鮮語学科、慶應義塾大学大学院法学研究科を経て、現在、東アジア地域外交史を専門とする南山大学教授。最近は、北朝鮮情勢に関するコメンテーターとして、TVニュースにも頻繁に出演している。
本書は、2013年に出版された著書に、その後の情勢変化を踏まえて、加筆・
...続きを読む修正し、新たに編集したものである。
本書で著者は、北朝鮮が①なぜ独裁体制を続けられるのか、②なぜ核・ミサイルに固執するのか、③なぜ国際社会を翻弄するのか、④日本はこれからどのように北朝鮮と向き合うべきなのかという観点から、太平洋戦争或いは朝鮮戦争以降の北朝鮮を巡る国際情勢がどのように推移してきたかを詳しく振り返りつつ論じている。
その中で再認識したのは以下のような部分である。
◆冷戦時代の社会主義陣営(ソ連・中国・北朝鮮)対資本主義陣営(米国・日本・韓国)という東アジアにおけるパワーバランスが、1990年のソ韓国交正常化、更には1992年の中韓国交正常化によって崩れたことにより、北朝鮮にとって不利な状況が起こり、基本的にはその構図が現状まで続いている。(その意味では、北朝鮮にとって中国は裏切り者である)
◆朝鮮半島を一つの国と考える北朝鮮にとって、米国は半島を分断して南半分を占領した国であり、韓国政府は米国の傀儡政権にすぎない。北朝鮮には、朝鮮半島全体に革命を広げて、南(韓国)を解放する使命があり、その革命の敵は米国なのである。
ただ、現在の情勢は、「北朝鮮に核を放棄させるための対話」を求める日米と、「自分たちの核保有を認めさせたことを前提とする対話」を求める北朝鮮という、誰が見ても明らかなデッドロック状態にあり、核戦争の危機を訴えて1947年に誕生した「世界終末時計」によると、1953年に当時の米ソが水爆実験に成功したときの“2分前”に次ぐ“2分30秒前”とされる緊迫した状況にあるにもかかわらず、残念ながら、今後のシナリオや有効な打開策が示されているわけではない。
現在世界で最大の危機事項に関して、まずはその背景を整理する上で有用な一冊であろう。
(2017年12月了)