本当にできるだろうか、という不安と同時に、それでもやってみたいという内なる衝動が湧き上がる瞬間: Calling 呼び声
合理性に基づく戦略や戦術だけでは捉えきれない何か、すなわち情理が経営の方向性を大きく左右する
情理を組織に活かす決定的な方法論を模索してたどり着いたのがCalling、8つのフェーズで本書ではまとめられている
最終的には自分が何を望んでいるかに向き合ってこそ、組織を動かせるし、自らのキャリアも築いていける
1 道標
・天職のような正解ではなく、環境が変化しても自分への問いを深めることで道を開くこと
・目的意識は絶えず更新され、動的に深化していく
・好きだからで始まったことが誰かの役に立つ形へ変わっていくように、自分の思いと現実の世界を橋渡しするのがコーリングの本質
2 軌跡
・我-汝、相手を自分と同じ主体として尊重し、心の深いところで結びつく対話や相互作用を通じてお互いの可能性を増幅する
・自分の内側にある可能性を信じ、これを精一杯発揮できることこそが成功 by松下
・コーリングによる動機づけが働いている時、自分の大切なテーマを軸にしているため、外部からの評価や報酬に大きく依存せず、やってる行為そのものに強い使命感や意味を見出す。
・エウダイモニア(幸福) by アリストテレス: 人間が本来の能力を最大限に発揮し、価値ある目的に向かって生きる時に得られる深い充実感
・人間の有限性を突きつけられた時(限界状態)、否応なくどう生きたいか?守りたいものは何か?という切実な疑問が浮上する
3 発見
・身体感覚に意識を向け、内なる声を発見し、具体的な行動に結びつけること(フォーカシング)
・すぐに結論出しや解釈をせず、身体からのシグナルをじっくり探ること。辛抱強く向き合うと、あるタイミングでああこれだと深い納得感が湧いてくる
・直感は膨大な情報処理の結果で重要
・ライフラインチャート(横軸時間、縦軸人生の充実度): 最も充実を感じた経験や出来事、大きな挫折や転機、一見関係ない複数の経験に共通する感覚、予期せぬ方向へ展開した場面、の4つの視点に注目
・違和感から入り、内側にある価値観とのズレや守ろうとしてるものを認識するのもあり
・コーリングは理屈よりも身体感覚や深層意識レベルの欲求と結びついているため、言語化できない形にならない衝動のままでもコーリングと呼べる。
・パーパスやミッションが目的地とすれば、コーリングは航海の仕方
・コーリングは新しい経験、環境との相互作用により、輪郭が明らかになったり、本質をより豊かに表現する機会になる、行ったり来たりしながら
4 試練
・極端な悪はあくきからではなく、内省せず従う普通の無思考な行動から発生する、自分自身の内なる声や価値観を明確にせず世間の波に乗ればどこかで自分の意思や尊厳さえ見失う
・社会的成功の基準や評価、性別役割などで判断の積み重ねが多層的に束縛していく。
・在るべき論は必ずしも誰かから強制されているわけではないが、社会からの視線を意識した自己監視をもたらす
・マインドフルネスは、自動的な反応パターンに気づき、内なる声と区別して構築された社会的ペルソナから脱するための足がかりになる
・自分が不安や躊躇を抱いた時に、その感覚を確定させずにありのまま具体的に記述し、カッコ書きして外出しするような形で相対化し、自分の解釈が妥当か問いかけることで別の選択肢が現れてくる。解釈の層を一枚一枚剥がしていく作業がエポケー
・人間の人生観には、大きく分けて、キリスト教的な選択問題(あらゆる場面には常に正しい選択肢が存在し、神の意思に照らして選び取らねばならない)と捉える方向性と、儒教的な道(本来進むべき道が存在するが、誤ることはあり、しかし間違いを通じて道に回帰すふことでむしろ成長する)と捉える方向性がある。
5 挑戦
・コーリングを育む普遍的パターン
1. ラクダ期: 周囲の常識や知見を一旦吸収し、重荷を背負うように基礎を固める
2. ライオン期: やり方に疑問を持ち、衝突や挫折をしながら自分のアイデアに挑戦
3. 子ども期: 自分らしく仕事を想像的に楽しめる境地、周囲を自然に巻き込み遊ぶように仕事を楽しみ新しい価値を生む
ラクダ期
・目の前の環境をある程度受け入れ、最善を尽くすと決めたなら、外発的動機に基づく働き方だからこそ得られる成長の機会が訪れる。組織に染まって自分らしさが損なわれると懸念は恐れなくて良い。
・大きなビジョンがあっても、なんの実績も裏付けもなく声を上げれば周囲から軽んじられたり、協力を得られずに孤立する。与えられた仕事で堅実に結果を出す、小さな成功体験を積むことが後に衝突を乗り越えるための武器になる
・その中でも違和感をメモしたり、今のやり方の利点や背景を問い続けたり、小さな改善を試みることには意味がある
・目標を高くしすぎず、頑張れば手の届くところに設定し続けることでずっと諦めずにいられる
・物足りない、自分の思いを出さないと前に進めない、と感じたらライオン期始まりの合図
ライオン期
・自分はここだけは譲れないという軸を言語化しNOを突きつける勇気が、周囲との摩擦と、組織を新しい可能性に導く原動力になる
・ただし相手の話を聞き強権的になりすぎない
・人々の本音にも触れ、衝突を乗り越える中で組織の理解度も増し学習機会になる
子ども期
・折衷は誰もが中途半端に我慢するだけで真の満足にならない、譲れないコアを互いに尊重しつつ、ぶつかり合う中で思いが融合し、創発的な新しい価値を遊ぶように創造する
・制約だらけの環境でも、自分の好きや得意分野を持ち込むことで自分のコーリングに根差した価値を生み出せる。そこには現実との葛藤があり、その中での工夫が成長を促す
・3ステップは人生一度の変容プロセスではなく、必要な時に短期、高速で繰り返すアプローチ
6 鍛錬
・コーチングによりコーリングの発見と実践を促す上での共通要素: HOME
・Harmony 他者との関係性: 他者は決して全てを理解し尽くすことができない存在として、常に知らない面があるという謙虚な認識が必要
・Ownership 内発性: 自分で決めて実践する、コーチが提示する場合でも複数選択肢を提示して本人が選ぶことで培われる
・Mastery 成長実感: 明確な目標がありその達成への過程で没頭するフロー状態を生む
・endurance 粘り強さ
7 拡張
・個々のコーリングが組織文化や制度にどう結びつくかが大きな意味を持つ
・労働(毎日繰り返される業務) と仕事(成果物を作る) をはっきり分け、行為(協力しながら未知の可能性を切り開く)を意図的に組み込むことがコーリングが開花する土壌作りにつながる
・組織のパーパスは掲げるだけでなく、個人のコーリングと結びつくことで内面化する過程が重要。共通点を探し、行為の領域で模索する。
・組織が人間の創造性や主体性を抑圧する一因は結果さえ出ればいいを例とした道具的理性にある。
・新たな制度やツールを出す前に古い慣習や形骸化したらルールを洗い出し思い切って辞めてみる。それが社員の余計な束縛から解放できると、心の余裕を生み、小さな削減であっても空気が変わることがある。
・労働と仕事を自動化や不要な管理の削ぎ落とし、行為を活性化させる。この時OKRは達成したい目標の背景や理由、目標を通じて実現したい未来などを深く共有するプロセスを重視するため、管理が緩い組織を防ぎ、創意工夫の余地を生み出す。
・引き算実践の視点
1. 対象業務が時間とエネルギーを取られることで行為の領域を抑圧してるかの検証
2. これまで継続してきた背景の理解
3. 有益性を持っていないか、あっても小さく代替手段がないか
4. 引き算によりどのくらい行為が促進されるか
5. 削減後の効果を検証
8 帰還
・人によりコーリングの輪郭が固まるタイミングや方法は異なり、探すことを強制したり早く見つけるべきという圧力をかけるものではない