「仮面ライダー怪人大全」とか、そういう図鑑的な本がけっこう好きである。
カタログ的にペラペラめくりながら、この怪人モチーフは○○と似てるなぁ、とか、このデザインはさすがにないんじゃないかしら、とか、個性的すぎて忘れられないわーこれ、とか、あれこれ考えるのが好きだ。
けれどもこの「大全」、怪人たちの外見や名称、特徴はわかるが彼らが登場した回のストーリーや流れ、どんなシーンがあったのかまではわからない。
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本書は、帯によると「こころの理解が深まる 科学に基づく"1分で読める"ケアの技法大全」/職場に一冊/(対象として)心理職を目指す人、福祉関係者、教職員、医療従事者(以下略)とある。
著者は河合塾KALSで長年臨床心理士・公認心理師受験のための講座で講師を務められている(受験対策のための通称「赤本」編者でもある)宮川先生、そして公認心理師受験対策の一方の雄、通称「ペンギン本」の編者である"ドットコム先生"こと三浦先生。監修が筑波大学の"あの"松崎先生という豪華布陣。
主な内容は、書名の通り臨床心理の現場で用いられているさまざまな体系やその技法、具体的にどういった場面で用いられるかを1〜2ページのボリュームに凝縮して紹介し、概観的に網羅しているというもの。長年受験対策書に携わってこられた先生方の実績がいかんなく発揮されており、現代の問題とも絡めたコンパクトな記述と文体が読みやすい(あと、挿絵がかわいい。テトラポッドが登場しないのが個人的に残念。笑)。
認知行動療法の用語や技法から始まり、相当のボリュームが割かれているのが個人的には胸熱だが、もちろんその他多くの心理療法についてもかなり専門的な用語まで網羅されているので、わからない言葉が出てきた時に調べるのにもいいかもしれない。
もちろん、それぞれに深い歴史と複雑な理論があるものなので、1〜2ページに収まるものではないことは知った上で、興味を持った分野をより詳しく深く知るための入り口という形で用いるのがよいのだろう。どの理論も深く学ぶと面白いし、何より"生兵法は怪我の元"と自戒したい。
なお、後半は受験者向けや心理職として仕事をしている人に向けた内容となっている。
私のような行動療法バカにとっては、受験が広い視野とさまざまな技法や考え方に触れるためのよい機会だったので、本書でも興味深いトピックに触れることができて意義ある読書ではあった。
ところで、本書は概説書ではあるものの、実は案外読者を選ぶ一冊かもしれない、とも感じた。
「ライダー怪人大全」を手に取るのがおそらく"ただのライダー好き"を超えて「怪人たち」に興味を持つ層であるのと似ているかもしれない(ライダー怪人よりは臨床心理学に興味を持つ人の方が圧倒的に多いだろうが)。
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「怪人大全」とかを見ていると、コンセプトが似たやつとか「あっこれ○○のスーツをアレンジしたやつなのでは」みたいな気づきがあったりする(よね?)。
対人援助の技法もそれぞれが独立しているわけではなく、どこかに通底するものを見出せたりするのが面白いと思う。
ちゃんとストーリーやエピソードを知った上であらためて眺める「怪人大全」、格別ですよ。
付記:宮川先生、三浦先生、松崎先生、受験の際は本当にお世話になりました。受験対策本やYouTube、SNS発信など学習者や現役の心理職への励まし、エンパワメントは本当に力になりました。