囚人たちが刑の軽減を賭けて殺し合う?! 近未来ディストピアSF #チェーンギャング・オールスターズ
■あらすじ
近未来のアメリカ、囚人たちによる殺し合いスポーツが行われていた。勝ち抜くことで刑の軽減や釈放が望めるが、敗北は死に直結する。
ルーキーの女性ロレッタ・サーウォーはコロシアムに立っていた。相手は強敵、女王メランコリア・ビショップ。女王の圧勝と思われたがサーウォーが勝利を手に入れる。このデスマッチの最果てにはどんな戦いが待ち受けるのか…
■きっと読みたくなるレビュー
文章が躍動感が凄すぎ! もはや文字が踊ってるんだよなー、ドライブ感もあるし、力強さもある。
しかも本作はキャラの関係性で読ませる物語なので、会話も心情描写もブスブスと心臓に突き刺さってくるんだよね。もはや読む麻薬です、打ちのめされるかもしれないので注意して読んでください。
本作は単なるデスゲーム、バトルものではなくて、様々なエンタメ要素を含んでるのです。
・グラディエーターのような生き残りバトル
・参加者どうしの関係性を描いたリアリティーショー
・女子同志の恋愛、友情を描いたシスターフッド
・狂った競技に熱狂する社会、差別や不平等問題
参加者は重罪の囚人たちで、運営するための組織もあって、ルールも決まっている。民衆に大人気であるものの、批判の声もあって、ひとつの社会現象を形成しているってのが面白いすよね。
当然フィクションではあるのですが、時折 ※注釈 が挟まれるんです。おそらくこれは現実のデータ。まるであり得ない話ではなく、このディストピアがそんなに遠い話ではないという警告のような気がしますね。
そしてさらに興味深いのは、この競技に参加者同士のリアリティーショーな部分ですよ。むしろ生きるか死ぬかのアクションシーンよりも、このひとりひとりの人間にフォーカスしてるところが読みどころです。
特に中心的な視点人物であるサーウォーと、その恋人スタックスのやり取りは最初から最後まで目が離せません(ちなみに女性同士です)。チーム内で起こった事件やメンバーの仲間意識も粘り強く書かれていて、かなり読み応えがあるんですよ。
そして終盤に近付くほどチーム内の緊張感も増していくんですが… ラストは必見、間違いなく手に汗握ると思います!
■ぜっさん推しポイント
本書引用:くたばれアメリカ
めっちゃくちゃなお話でしたが、本作の後ろ側で透けて見える部分に、現代のアメリカを感じました。
資本主義が行きつくところ、強く力のある者が全てを決めていき、公平性よりも合理性が優先する。差別や格差はどんどん進み、ついてこられない者が悪となり、淘汰されていくという世界。
悪夢のようですが、現実でも中らずと雖も遠からずですよね。そして日本も決して笑えないと思いました。