インドにどハマりして早や10年。その間映画や本で貪るようにインドをインプットしていったが、全然極められていないと痛感している。
学生時代アニオタっぽくない白人留学生が“I’m OTAKU〜!”と触れまわる場に出くわしたことがあるが、今の自分は限りなくそれに近い。
観た映画の数は10本の指に収まるし、あれだけ読んできたのに未だ歴史や神話を覚えきれていない。(「だって複雑なんだもん」って言い訳が喉まで出かかってる…) 現地で暮らしたことだってないし。
まだまだ「インド沼」にハマりきれていない自分。「沼っ子」(何じゃそりゃ)への道に一役買ってくれるか!?と本書を手に取った。
本書はインド映画(一部日本でも観られる)を紹介しながら、歴史や社会・ジェンダー等あらゆる方面からインドを掘り下げていくというもの。『RRR』みたいなド派手な作品から、社会派・果てはB級作品まで、著者の鑑賞歴には舌を巻いた。ストーリーも分かりやすくまとめてあるので、おかげで気になる作品もドシドシ出てきた。
「インド映画」と一口に言っても、多言語国家のインドでは言語別に映画が制作されている。
大都市ムンバイを拠点としするヒンディー語の映画産業はいわゆる「ボリウッド」。日本に一大インド映画ブームをもたらした『ムトゥ 踊るマハラジャ』の制作は、南部チェンナイが拠点のタミル語映画産業「コリウッド」。『RRR』の制作には、中部ハイデラバードが拠点のテルグ語映画産業「トリウッド」。
中でも最近は「ボリウッド」よりも、「コリウッド」や「トリウッド」で輩出される作品の方が大ヒットするという。
インド映画といえば勧善懲悪に派手な歌とダンスが特徴的だが、やはり多言語国家のインドでもそっちの方が楽しめるし大ウケするらしい。
興行収入ランキングには過去に観た作品も多数ランクインしていたが、どちらかといえば自分は、社会派なボリウッド作品の方が好きかなー。
本に挟んだ付箋を辿っていくと、今回自分は映画産業方面に惹かれていたようだ。(思えば映画を入口にインドにどハマりしたわけだし、当然っちゃ当然か。) 映画を通して社会問題に踏み込んでいく構成ではあるけど、単純に「その映画、観てみたい!」という欲求に駆られた。
特にB級や世界的作品のパクリ映画の章は、他のインド本ではなかなか見られないので結構燃えたなー。神話が題材のB級映画ではスクリーンに向かってお賽銭を投げる人が続出したり、全然違う内容なのに『ハリー・ポッター』とタイトル名が似ているという理由で訴えられたりと、インドならでは(?)の小景が垣間見れて謎の元気をもらえたり。
本書で取り上げられている作品は基本的にハッピーエンドである。
都合の良いストーリーだと半ば呆れながらも、心のどこかではそれを求めていたりする。インドでも日本でも、現実丸く収まらないことだらけだから余計に沁みるのかな。鑑賞して得た元気を力に変えて、より良い明日に向けて動き出す原動力にもなり得る。
やっぱり沼らない手はない。同時に、10年前この世界に飛び込んだ自分を誇らしく思った。