「家族なんだから」「助け合わないと」
私は呪いの言葉だと思う。
主人公のむくは、家族に弱音を吐かずに祖父の介護を1人で行う。
「疲れた」「もっと遊びたい」「でもみんなありがとうと言ってくれる」「こんなこと考えちゃ駄目」
頭の中で様々な言葉が海となり、沈み、溺れて、息ができなくなっていく。
言葉に
...続きを読むできない言葉の海が度々出てくるのがとても印象的だった。
「理想の世界を夢見るから、私は現実を生きていられる」
私も同じことを思って生きてきたので、とても主人公に共感した。同時に同じ人がいてほっとした。
そして、「むくの時間を無計画に使う方がよっぽど薄情だよ」と言い放った幼馴染みの優都。
一見冷たく見えるかもしれないが、彼には彼自身の正しさの中に強い優しさを感じた。
登場人物の中で唯一、感情論抜きで話すところが良かった。
「名前がついていく」
「暖かい海で溺れてゆくようだった感情に」
「私の人生を漕いで行ける」
私は本屋さんでこの本をお恥ずかしながら、号泣しながら試し読みをした。
何度読んでも美しい雪景色と、現実の虚しさが心に沁みるお話だ。
でも、
この雪原で君が笑っていられるように。