元の姿の時には母親と向き合ってきちんと会話するなんて出来なかったのに、麻衣の姿ではある程度出来てしまうのは皮肉な話
また、そうして見えてしまうのは母はのどかを匿っているかも知れない麻衣に対してとことん敵対的な態度を崩さなかった点、自分はそうした母を完全には嫌いになれない点か…
だからこそ、ライブシーンはのどかにとって最大限の痛みを伴うものになってしまうわけだ
彼女はCM撮影を通して桜島麻衣には成れないと実感した。なのに麻衣は豊浜のどかをのどかよりも上手にこなしてみせた
その事実は他人は他人とか、人はそれぞれ違うとか、そういう在り来りな言葉では済まず、桜島麻衣はもっと人間が出来ていると示してくる。麻衣をあれだけ敵対視していた母が麻衣演じるのどかに感動していた、涙を流していた。それは母が最も欲していたのは桜島麻衣であると間接的に突き付けてくるかのよう
そうして豊浜のどかという人生に失望した彼女が咲太を試すような行動に出たのは仕方ない面があるとは言える。けど、咲太は麻衣の彼氏であってのどかの大切な人には成れない。彼が示せるのはのどかを大切に想ってくれる人は別にいると示す事だけ
のどかと麻衣ってそりゃ複雑な姉妹関係で一言や二言じゃ到底その心情は説明しきれないんだけど、互いが互いの存在に勇気を貰っていたのは確かなんだよね
お姉ちゃんを欲しがっていたのどかはテレビで活躍するような人が姉だと知って勇気を貰えた、芝居やアイドル活動を頑張れた
早い内にブレイクした麻衣は本人の意を介さぬまま大人の世界に放り込まれた。それだけに妹が無邪気なままに自分を応援してくれたのは仕事を頑張る勇気を貰えたのだろうね
結局、のどかは麻衣に成れないしのどかを一番上手く遣れる訳でもない。でも、のどかがのどかとして存在した事を一番憧れた人が認めてくれていた。それはのどかが豊浜のどかとして生きていくには取り敢えず充分な理由か
そうして彼女が始めたのは母離れか
これまでは桜島麻衣を意識し過ぎた二人が近くで過ごしていた為に衝突が起こってしまっていた。のどかがのどかとして生きるには不器用な遣り方であっても、少し母から離れて暮らすのは正解なのかもね
表情豊かになって姉との二人暮らしを楽しみ、アイドル活動へと邁進する姿には生きる遣り甲斐を感じられましたよ
のどか視点を徹底した本作、原作で存在した咲太や麻衣が体感したシーンはほぼオマケ漫画でフォローされる程度に済ませていたのは好印象
その御蔭で原作よりものどかの心情がより鮮やかに描かれていたし
そうした視点による副作用か、ストーリーが進む毎に咲太が格好良く成っていくのはちょっと笑ってしまったり
そうだよね、のどかからしたら自分を捨てかけた時に離れず傍に居てくれて欲しい言葉もくれた咲太への認識が変わらない訳がないんだよね
でも、咲太は一貫して麻衣を一番大切に想っている。それはとても魅力的な姿でありつつ、のどかが余計なものまで欲しがらずに済むブレーキと思えたな
個人的には、原作4巻で思わせ振りな発言をしたのどかが以降は一切匂わせるような言動をしなかったのはどういう心情かと原作だけでは読みきれない部分が有ったのだけど、このコミカライズを通してようやく豊浜のどかという人間について色々と納得出来た気がするよ
それは咲太に対する姿勢だけでなく、どれだけ麻衣が好きかという点を含めて
このコミカライズを読めて、本当に良かったと思える体験となりましたよ