「みんな頑張ってるからあなたも頑張れ?みんなって誰?私は頑張ってないの?」
「どうして変えた方がいいことを、あまり変えたがらない人たちがいるんだろう?」
「私が変なのかな?私の考えとあの子の考え、気持ちはなんで違うの?」
「私がもし女だったら、どうして地元から出ない方がいいの?」
読まれている方の
...続きを読む中にはこれらが偏見の塊に見えるかもしれないし、考えすぎという意見もあるかもしれない。
暴論だが、このように人によっては小さな頃から抱えてきた「?」な心や社会の問題は、立場によりくるくる様相が変化する。でも、人の心はそれに耐えられるんだろうか。
本書では社会心理学の立場から私たちの個人の心に起こることから社会的結びつきまでスケールを伸ばし各々のレイヤーについて、著者が柔らかく噛み砕いて説明してくれている。
3回ほどトライしてようやく最後に漕ぎ着けた。
柔らかく、といっても真意を噛み砕くまで時間がかかるし、正直何度も読み込みたい。
何故ならば、私たちが日常で流してしまっている価値観に照準を当てて、私たちの中にいつのまにか居座っていた「こういうものだ」「〇〇は▲である」といったある意味簡易化された、しかしそれゆえに本来多層的なはずだったのに偏った認識のベールを剥がしてくれるからである。
かといって、この本は価値観の正しさの擁護や自己啓発を目的としているわけではない。
これが、本書の一つ特徴的だな、と思う点だが、
あくまで科学的に論理的に、心や社会の傾向を分析して、私たちが明日、未来に向けて、自分自身を助けるために、どんなTipsが有効になりそうかを考えているところである。
たまに、メンタルに不安がある場合、まず自身の感じたままを大切にするように言われる。実際私もそれは必要だと思う。しかし、未来に向かう時、自身に起きた出来事を再解釈する際に最大の味方かつ壁になるのも自身の感じ方である。そのとき、もし自分が1から10を知ろうとしている癖だったり、苦しめている価値観を認識できたなら、次の解釈に向けてさらに取り組めるようになるのかもしれない。
ホットなトピックとしては、コロナ禍における社会心理について取り上げているところも興味深い。
不確実な未来、VUCA時代と、就職活動の企業説明でも、ニュースでも、私たちが感知しきれていない広い世界から光より早く課題が投げかけられ、最小単位たる個である私たちがなんとか落とし込んだり解決に挑戦するなり右往左往する時代である。もののスピードもはやくなる一方で、心を守るための私たちのトレーニングは、追いついていない気がする。
就活ならば、たくさんの会社に応募できるが落とされることも増えるし、SNS上で良くも悪くも他人が見えるが故に己を責めることもある。しかし「みんな通る道」と過小評価されてないやしないか。みんなは通らないし、通った人は皆苦しみを知る。マッチングだ、巡り合わせだなんて嘯いても、振られたり落とされたらやっぱり悲しくなってしまう。
就活を例に出したが、このような心にヒビが入りそうなことが、早くなる時間の中でゲリラ豪雨のごとく降りそぞくこともあるわけで、、
そんな時に、雨宿りの場所だったりを示して、次に繋げていくための一歩をそっと寄り添ってくれる本だと思う。