「都市のイメージ」が建築計画に与える意義について、建築計画を行う人間の立場の変化という点から論じる。
本書は、都市の視覚的要素のうちとくに外見の明瞭さ・都市居住者にとってのわかりやすさに焦点を絞り、それをイメージアビリティという独立変数として定義し、外的操作による発展させることのできる可能性につい
...続きを読むて探っている。これは、かつて大きな問題とされた都市の無性格なスプロールによるスラム的拡大の中では、都市の美しさ・プロポーションの良さより、わかりやすさ・印象の強さが人々にとって重要になってくるという思想に基づいていると考えられる。
注目すべきは、都市の捉え方がかつての計画者や為政者が考えたような建物と街路の意図的な配置の問題から、あるがままの形態とその背後にある固有のイメージだけをたよりに、そこに住む人々によって感じられるものとなっている点である。これはそれ自体興味深い分析結果を生むものであると同時に、以後の計画者のあり方を都市の判断基準を個人の主観として都市を分析し計画する立場から、基準を都市居住者のイメージに据えそれを分析しまとめあげる立場へと変えることを要請するものである。
また、Ⅳ章後半においては都市を分析した結果得られた5つの要素(パス・ランドマーク・エッジ・ノード・ディストリクト)において共通して現れてくる10の操作可能な特質、およびそれらを統合した「全体としての感じ」の重要性について記述されている。これは今後本書における研究をベースにして都市デザインを行っていく際の展望を示すものとなっており、前述のようにイメージをまとめあげた上でデザインをする事が可能であったことを示している。
サンプル数の少なさや地域の偏り、また研究目的をスプロールによる不明瞭な都市の発生を受けてのイメージアビリティの向上のみに絞っていることから、この研究から得られた結果を現代において直接適用することは必ずしもよいとは限らないが、都市や建築をはじめとした構造を計画するにあたって重要となる立場を示したという点で本書は計画学上意義深いものであるだろう。
…という批評もできるし、都市の要素の切り出し方や研究手法、またそれぞれの要素について考えるべきことが記述されているので単純にそれを参考にするだけでも非常にためになります。内容は平易。
付録が未読なのでまた読みたい。