〇ほぼ35歳、非管理職の職員が読んだ感想
とっつきにくい行政法を、身近な事例を通じて「自分の業務にどう関係しているか」という視点で捉えられている点が素晴らしいです。
私は行政法をいわゆる『サクハシ行政法』で勉強しましたが、事前に本書を読んでおけば、さらに解像度が上がって理解が進んでいたことでしょう。法学基礎、法制執務、行政法全般、自治体訟務と、幅広いテーマの痒い所に手が届く一冊となっています。
〇第1章の感想
法に馴染みのない方のために、法学基礎の大事な部分だけをさっと学べる構成が素敵。特に「法令の読み方・使い方」については、新規採用研修で学んだきりで、長い法律や条文へのアレルギーを発症している中堅職員も少なくないのではないでしょうか。最近は中途採用者も増え、中堅ポジションでありながら法学基礎を学ぶ機会がなかった職員も増えてきているため、ぜひご一読いただきたいです。
もっと基礎法学を分かりやすく理解したいのであれば、『自治体の法規担当になったら読む本〈改訂版〉』も併せておすすめです。
また、法令情報の入手方法まで解説があるのもありがたい点です。本書に記載はありませんが、大臣会見で法源や解釈が示されることもあり、情報収集はいつまでも終わりません(笑)。
〇第2章・第3章はまさに行政法のど真ん中
処分性については、最近「職員が退職したことによる給与支給の停止が、事実行為なのか処分なのか」を確認する機会があり、非常に身近なテーマだと実感しました。
行政手続法関連では、事例の生活保護のように「申請」を正しく理解しているかどうかが実務のお作法だと言えます。「届出」という名前の「申請」は実務上の“あるある”ですね。教示文についても、フォーマットがあればよいですが、一から作ろうとすると組織と制度の理解が必要で意外と手間がかかるものです。手続きの電子化についてはまだ担当したことはありませんが、参考になる部分が多くて勉強になりました。
公文書公開関係が簡潔に整理されている点も良いです。庶務担当時代に公開請求を経験していないと、つい「見せたくない」と思いがちです。大量の開示請求がされたときの対応や、公文書開示と個人情報開示における「不開示部分」の差異など、実務担当者が知っておくべき情報が網羅されています。
行政契約の部分は、公金支出のお作法として身近なルールが整理されていて読みやすいです。後輩から質問があったときにサッと答えられるネタ帳としても有用だと感じました。
行政組織関係では、委任・補助執行・専決の重要性を再確認しました。現場では権限が分からず、何でも上級庁に丸投げしてしまう職員もいるため、十分な理解が必要です。
第2章コラムの「らぁめん公食軒」は行政法のキーワードが上手くまとまっており、芸術的で一見の価値があります。
第3章は応用的な内容ですが、特に「公表」が取り上げられていた点に好感が持てました。
〇第4章はいわゆる自治体訟務
30歳を超えると大型案件を任されることが多くなり、上司から訴訟リスクの検討を指示されることもあります。いざゼロから調べようとしても、自治体訟務の分かりやすい解説本は少なく、本書は非常に有益な1冊です。特に、訴状が届いてからはスピード勝負であり、調べている時間も惜しいものです。今後、さらに詳しい自治体訟務の解説本が出ないかなぁと期待してしまいます。