著者はかねてより庶民の金融リテラシーを高めるために力を注いできた。本書はその一環であり、金融の世界で働いている人を対象にしたものではない(とてもやさしい脚注がそれを示している)。
私は金融機関で働いていた(また、そのことに誇りを持っていた)が、スルガ銀行、商工中金、かんぽ生命(保険料二重徴収)の不
...続きを読む祥事に接して、「半沢直樹はどこへ行った!」と慨嘆した。スルガ銀行では「数字ができないなら、ビルから飛び降りろ」とのパワハラがあったとの報道に絶句した。そのスルガ銀行を森金融庁長官は「地銀の優等生」と持ち上げていたのだからお粗末極まりない。また、郵政民営化で郵便局を信頼している高齢者が騙されるのではないかと思っていたが、その通りになった。最近ではSMBC日興証券の相場操作事件があり、「金融界で働いていた、と言うと白い目で見られてしまうな~」と嘆いている。
小幡績氏はリーマン・ショックについて、経済を黒子として支える金融資本が表舞台に登場し、そこに居続けるために実体経済を利用して自己増殖した結果、リーマン・ショックを惹起した、と述べていた。この「経済を黒子として支える」に当たるのが新保氏の言う「金融サービスの社会的責任」であろう。
本書に、市井の人にとって極めて重要なメッセージがある。「老後に2,000万円必要」を巡る騒動に関して新保氏が述べていることである。以下、引用する。
老後の生活の予測を人任せにすること(レビュワー注:金融審議会の報告書内容を鵜呑みにすること)は、まったく意味がないということを理解すべきであろう。(中略)老後の生活資金に不安がある人々にとて、資産運用は重要項目だ。多くの人々は資産運用に関しては素人であるし、金融商品の仕組みを聞いても、「よく分からない」と答える人が多いのではないか。しかし、「分からない」では自らが困ることになる。金融サービスを受ける個人側にも意識の改革が必要だ。
金融サービスについてあまり知る機会がなかった人にはお勧めする。