乙女ゲー風デザインで展開される、中国古典「楊家将演義」をモチーフにした中華風ファンタジーの第一巻である。
天涯孤独の身となり、都会の転校先でも居場所を見つけられないでいる主人公・鳥羽鈴が、何の因果か炎燃え盛る千年前の戦場に転移し、楊家一門と出会って――。
といった形で展開する今巻は、物語世界
...続きを読むを説明する形で楊家一門(9人兄妹やその父母)であったり、彼らが所属する宋や敵対国の遼であったりを説明している。
イケメン多数の、一件女性向けコミックや乙女ゲー的なデザインが目立つが、物語像は意外に硬派で王道の印象もある。
それだけに先の展開が予想しづらいが、宋内部での抗争や遼陣営の策謀など、かなり硬い歴史絵巻が予想される伏線も目立った一巻だった。
そうした物語像とは裏腹に、個人的には
「主人公の造形、力入れてるなあ……」
といった印象も残っている一巻である。
感受性豊かに見知らぬ世界を生きる彼女の一挙手一投足が活写され、また中華風世界の衣装なども複数まとう様なども描写されている。
中華風世界を体験する一人称的な物語の楽しみを、漫画的な三人称視点で色鮮やかに活写している印象である。
この辺、女性向けコミックは本当に(主人公の女子の)描写を怠らない印象が強い。その系譜の丁寧な描写が目に楽しかった。
これからの展開に期待しつつ、ここでは星五つと評価したい。
今の時代、楊家将演義なんて題材まで漫画になるんだな……と感慨深く思いつつ、続巻の展開を楽しみにしたいところである。