安倍政権がなぜあれだけの長期政権となったのか、その統治の方法を、ある意味客観的に分析した本。
「民主党政権を『悪夢』と呼んでいたことには実は計算した狙いがあった」など、それ後付なのでは? と勘ぐりたくなる記述もあるものの、基本的には、安倍政権のメカニズムを冷静に観察しているように思う。そもそも執筆
...続きを読む陣が大学教授なので、何の根拠もなくヨタを飛ばすどこぞの作家やら、自称文芸評論家とは趣が違う。
ただ、本の趣旨からして当然だが、インタビュー相手が政権中枢にいた政治家や官僚がほとんどなので、どうしても自画自賛的な話が多いし、これもまた当然だが、ジャーナリスティックな視線は皆無。安倍政権は官邸の意志を現実の政治に反映するためには、非常によくできた仕組みだったんだなと思う反面、その仕組みを維持するために犠牲になったものも少なくないはずで、それを「政治のリアリズム」として納得できるかどうか。
安倍嫌いの、(研究者ではない、という意味で)一般的な読者にとっては、安倍政権礼賛本だろうし、安倍政権を支持していた人にとっては、「左右どちらに偏ることもなく中立的な立場の本」ということになりそうな感じ。
編者であるアジア・パシフィック・イニシアティブ理事長の船橋洋一(ちなみに、この人は元朝日新聞の人)が「はじめに」でこう書いている。
「……野党が統治のあり方を組織学習することは、日本の政党民主主義にとって切実な宿題となっている」
政治のリアリズムという観点からすれば、まさに野党の人、読んでちょー、という本かな。