これは、実に良い漫画である。人を笑わせる漫画として、質がとても高いって意味でも、「実に良い」んだが、私としては、読み手の自己肯定感を強めるパワーを持っている、ここをお勧めする理由にしたい。
自分が「好きなもの」を「大好き」として誇れる日常の楽しさ、それを、この『土田と花岡』は教えてくれている。
表紙とタイトルから丸判りだろうが、この作品の主人公は、この男子2人だ。ちなみにゴリラっぽいのが土田で、外見に清涼感があるのが花岡だ。BLではなく、BF、男同士の友情ストーリーかつFF、ファン同士の友情コメディだろうか、言うなれば。
一見すると接点がなさそうな二人を親友、ソウルフレンドまで一気に引き上げたモノは、女児向けアニメである。まぁ、ぶっちゃけちゃ、「プリキ。ア」みたいなアニメだ。それに、二人とも、どハマりしている訳だ。
仲良くなったキッカケってのが、土田が実は絵が上手いってのを花岡が知った事。実にベタだ。しかし、そこが良い。自分が「好き」なものが同じだった、と判れば、自然とクラスの立ち位置は関係なく、友情は築かれていくものだ(と私は信じている)。
私が上記した、自己肯定感を強めるパワーを持っている、はここだ。土田と花岡はクラスで、自分達が女児向けアニメを好きだ、と公言してはいないが、それでも、同好の士が出来たことにより、毎日の輝きが増しているように見える。特に、土田は顕著じゃないだろうか。
これは、花岡だけに、とは言え、自分が好きな物を隠さなくて良くなり、ストレスが軽減されているから、と私は読んで感じた。
何だかんだで、世の中で、オタクと呼ばれる人が活き活きとしているのは、自分の「好き」なものを偽らずに生きており、それを分かち合える友人が多いからじゃないだろうか。
もちろん、そこだけじゃなく、漫画としても面白いので、皆さんにはぜひ、読んで欲しい。土田と花岡に現代文を教えている水野先生が、実はディープなオタク絵師って言う、「お約束」を押さえている点も実にグッと来た。また、ある意味、絵の才能がある花岡が、同人誌を出すって無謀な挑戦を掲げている展開も熱い。
私が個人的に「面白い」と感じたのは、第13話「花岡のいもうと」だ。ゴリゴリの不良ではあるものの、中身は色んな意味で悪っぽくない土田に、花岡の双子の妹である蜜実と蜜梨が、紆余曲折あって懐いちゃうってストーリーは、心が温まる。下手すりゃ、これ、双子が土田の彼ピの座を巡って、ガチバトルになるのでは・・・いや、さすがに、それは漫画の読み過ぎか。
この台詞を引用に選んだのは、何気に、花岡は兄力が高いな、と感心したので。
世の中の、妹たちの喧嘩に手を焼いているお兄ちゃんは、この手を使ってみるのもアリかも知れない。
ぶっちゃけ、兄が喧嘩を仲裁したところで、妹たちが喧嘩をすんなりとは止めないのだ。むしろ、火に油を注ぐだけになる。かと言って、完全に放置しておけば、親に文句を言われる。踏んだり蹴ったりである。
であれば、妹たちが自分から喧嘩を止めるように仕向けるのが一番。
この難題を見事に突破した花岡、中々にやりおる。
「じゃあ、もう好きなだけやりなさい。チアプリ始まるし、お兄ちゃんは知らん」(by花岡)
もう一つ、この『土田と花岡』でグッと来た台詞を。
これは、シンプルに納得できるものだった。
良い漫画やアニメってのは、こういう、人の心に残る台詞が出てくるからこそ、最高なのだ。逆に言うと、いくら、キャラがカッコよかろうと、作画が美麗だろうと、台詞でファンの心を揺さぶれなきゃ、質が低いって事になっちゃうかも知れない。
何だか、自分が「小説家になろう」に投稿している作品の評価がイマイチな理由が見えたような気も。
「いい? 鬱子ちゃん・・・・・・実る力と書いて『実力』・・・・・・!! こういう何の準備もしてない状況でもパフォーマンスにこそ、付け焼刃じゃない自分の本当の力が試されるんだよ・・・! 練習はしてきたんだから、それを出すだけ!」(byふぁいとちゃん)