再読。
中嶋朋子さんと言うと、思い付くのがTVドラマ「北の国から」の子役のイメージが強い。
中嶋朋子さんは、幼い頃から「演じる」という場で、「私だけど私ではない、もうひとりの私」を演じてきた。『まだ自分自身も作られていない状態で、「あなたはこうあるべき」という様々な人たちからのものさしに向かい合い、私は本当の自分を育むことを投げうって他者の人生を生きようともがいていた』ようだ。
中嶋朋子さんの趣味が、空中ブランコだということは、この本を読んで初めて知って驚いた。なぜ空中ブランコが趣味になったのか?
その中嶋朋子さんが、日頃から〝言葉〟に対してどれだけ真剣に向き合い、大切にしているかが伝わってくる一冊。
この本には、中嶋朋子さんがこれまで様々な場面で出会った言葉と、その言葉にまつわるエピソードが書かれている。言葉をめぐる中嶋さんの感じ方や考え方がステキで、ハッとさせられたり心を洗われたりする。
中嶋朋子さんの繊細で豊かな感性が伝わって来て、何度も読み返したくなってしまうステキな本。特に、息子さんとの会話が!
「はい! 大好きなものでいっぱいのママになりました!」と言った息子さんとのエピソードには感動してしまった。空中ブランコが趣味になったエピソードも。
心に残った言葉
・過ぎて行く時間、積み重なる体験。私達は結果にばかり目を奪われがちで、その時その瞬間にあったざわめきやきらめきを何でもないもののようにスルーさせてしまう。迷ったり憤ったり喜んだり感謝したり。小さなピースの積み重ねで今の自分が出来上がっていることをきちんと味わい尽くしたいと思う。二十歳の若者のようにはいかないにしても、未完であることは素晴らしい! まだまだまだ人生の中やってくる自分のピースを嬉々として手にしていかなければ。息子に学ぶ成人の儀でありました。
・文字を持たず、人と人が交わす言葉で、一年人が交わす言葉で、様々なことを伝え合って来たからこその「語る」ということに内在する豊かさ。その文化に、私はとても心惹かれた。「言葉を駆使する」あるいは「言葉を尽くす」という本質が、アイヌの人々の文化にはあるように思える。それぞれの言葉に込められた、豊かな想いを意識することで、さらに豊かな心根を育むことができる。アイヌの人々は、そんな文化を重んじ、受け継いできたのではないだろうか?
・この曲を初めて聴いた時、「すごくわかる!」と、何度も反芻した。この歌詞には続きがある。「答えはきっと奥の方 心のずっと奥の方」、自分自身で答えを探さなきゃいけない、世界を、社会を、常というものを鵜呑みにせず、自分の心に問うことが大切だと、彼らは私たちに歌いかける。
・人に期待をしない〟とはなんぞ? 息子曰く「僕は人に、どうして欲しいとか、こうあって欲しいとかの期待を持ってないんだ」。不思議なことを聞くなぁといった、力みのない風情でムスコは続ける。「その人は、その人のままいていいと思うからだよ。、そこから何が出来るか考える、それだけだよ」と。
・こうしなければ」と、あるべき姿を求めるより、「それでいい」と、肩の力を抜いて、抱え込んでいるものを手放してみる。そうすると、あたらしい世界が拓けてくる。ふと、そんな風に思えたとき、私の心は軽やかになりました。まるで、空中ブランコのように。ゆだねて、手放せばいい。あるがまま、そのままの自分。今の私に、正直になろうー。