白水社『「その他の外国文学」の翻訳者』で紹介されていました。ビスケー湾岸でスペインからフランスにまたがる地域がバスク地方になるらしいです。スペインが独裁政権だった頃は使用が禁止されていたバスク語で書かれています。翻訳の金子さんがバスク語から直接日本語に翻訳されているとのことでした、バスク語→スペイン
...続きを読む語→日本語では伝わらないことがあるらしいです。
小説の主人公はキンメル・ウリベで作者本人です、この小説の取材と構想をねっているところが綴られていきます。というか小説の準備段階が本編となっていて、読者はそれを読んでいくことになっていきます。なんだか技術的に難しいことをキンメリ・ウリベはしているんじゃないかと思います。
ビルバオ銀行マドリード本社を設計したリカルド・バスティダとその銀行の壁画を描いた画家アウレリオ・アルテタの交流、キンメリ・ウリベの祖父と父親の思い出が語られていきます。その合間にキンメリ・ウリベのアメリカへの旅行の様子が描かれます、リカルド・バスティダの息子さんの日記にあるアメリカへの旅行をなぞっているようです。バスク地方とウリベ家3世代の歴史がわかるようになっています。
私の好きなエピソードはアルテタがバスティダにあてた手紙ところです。
『司教は、聖母マリアの姿が使徒たちよりも大きいのに気づくと、こう言ったのだ。『男性像が女性よりも小さいのはよろしくない』ので、『もっと大きくできるだろうね』と。私としては百回書き直してもかまわないが、司教が作品を台無しにしているうえに、私の苦労にまったく気づいていないのがつらいのだ。おまけに、先週体調を崩してしまった。』
登場人物が強い人物だけでなく、このような正直に弱音をはく人もでてくるとこるがこの小説の豊かなところだと思います。
バスク語がバベルの塔で生まれた72の言語のうちのひとつらしく、NYの詩人がバスク語にについて『あなたたちの言語は、宝の地図みたい。ほかの文字のことは忘れてxxxの文字だけをじっと見つめていると、宝のありかが見つけられそうなきがするわ』と表現しています。またキンメリ・ウリベはベリオサバルの泉のエピソードのところで『空想は現実に基づいているのだと言われるが、物語の法則は、真実の一面だけを語ることだ。』と『本当かどうかはたいして重要ではないのだ』さらに『その他はすべて人々の空想だ。』と語っています。どこまでが事実でどこまでが創作なのだろうかと考えれると、バスク語で書かれたこの小説がものすごく楽しく愛おしく感じられます。
もしかしたらピカソがゲルニカを書いた経緯も創作なのかも知れません、検索すればわかるかもしれません。ですが謎のままにしておくのも良いかも知れません。