ゴシップ感強めな文体ではあるが、一般の人々の目に晒されることのない現場の一端であることは確かなんだろう。
私も介護士の端くれだけど、筆者が勤務されてきたような過酷な施設(高齢者、障害者)は経験していないので、どこか遠い出来事と感じてしまう部分もあるが、反面、介護するされるどちら側でも、自分がその渦中
...続きを読むにいたらと想像するだけで恐ろしくなる。
誰かがやらなければならない。
誰もが当事者になる可能性がある。
筆者は繰り返し、想像せよと読者に訴えている。
どこかで虐待が起きる。世間はその加害者を糾弾する。
「何かを断罪するというのは、自分が窮地に立たされた時、同じように世間から断罪される世の中を作ることと同じだ。」p136
誰しも歳を取る。
あるいは思いがけず病や障害を追うかもしれない。
「自分たちの平穏な生活が突然終わりを告げ、選択する余地もなく知らない場所に閉じ込められる」p204 のが有りがちな現状だという。
自分で自分を支えられなくなった時、次に訪れるのはどんな世界なのか?
人生の締めくくりがいかに脆く厳しいものか...「人間らしく」生きることの難しさを思う。