甲斐みのりさんつながり。その1冊目。
彼女への興味や関心は、ここから始まった。
同名のテレ東で放映された番組のファンブック。ドラマ仕立てで様々な近現代の名建築をめぐる。主人公はOLの女の子と建築に詳しい中年男性という異色の組み合わせ。でも大人らしい温かな友情が描かれて、爽やかだ。
この作品・本は
...続きを読む『乙女建築』とニックネームされる、昭和中期までの優雅な名建築をめぐるもの。明治から戦前まで。そして戦後復興を経てからの、高度経済成長期からの優美な建築の魅力があふれている。これらは。無意識に感じている人が多いと思うけれど、まとめて鑑賞できる手引はなかなかない。動画でドラマを追いながら観るのも、リアリティがあってすごくいい。しかし、本で建築だけに注目して名建築を味わうのも、とてもいいものだ。
建築だけじゃなく、戦前までのレトロモダンと、それを引き継いだ昭和モダンは、モードにも、細やかな生活の折々にも美しい、上品なものをたくさん残している。昨今の大正・昭和ブームは、その真価を多くの人が評価した結果と思う。
自由学園の明日館や銀座のビヤホールライオンなどは、私も実際に立ち寄ったことがある。気が付かずに美しい場所を訪れていたのだなと感銘も受けた。また、ヴォーリズや坂倉準三の仕事は、あちこちに影響を残していて、国立西洋美術館をはじめ、もしやあそこも。もしやここもと思い当たる場所が多くあって、それを調べるのもすごく楽しかった。
日本人は、なんでも壊して作り直す。いいものでも、価値なんてお構いなし。それが、新しいよいものを生むこともあるけど、やっぱり残すべきところは残して欲しい。幾年かを経てリバイバルヒットするのはいいが、建築だけは壊したら再建がむずかしいからだ。優雅なもの、美しいもの、シャープなもの。切り口はなんであれ、新しい名建築の誕生もあってほしいが、それらはこれら、近い時代までの、文化やセンスの蓄積の結果。どちらも大事に楽しんで、活用し、新生させたいものだ。