NY在住の内科医による、医師と患者の間のコミュニケーションの問題を分析した1冊です。
最近ではAIが活用された事例なんかも聞きますが、今の医療診断の中心に位置しているのは、依然として「医師と患者の会話」です。
ただ、この会話というツールの難しさを実感させられたのが本著でした。こんなに簡単に使えるツー
...続きを読むルはないのに、なぜこうも難しいのか!
自身の医療経験や取材を踏まえた16章は、比較的読みやすいトーンではあるのですが、医療という人命がかかった現場における余裕のなさや、その状況下で少しでも良いやり方を求める医師の職業倫理の高さ(と、その患者向かいでの理解されなさ)を感じ、ままならない重いテーマだとも感じました。
本著によると、「患者には喋るだけ喋らせた方が良い、そんなに長くならないし、コミュニケーションミスも減る」ということで、基本的には医師は患者の話に傾聴すべきというスタンスなのですが、同時に日々の実務の中でそれを実現していくのがいかに難しいかというのも描かれています。
個人的な印象としては、医師というと「ゴッドハンド」的な職人芸を連想して、傾聴してくれる存在とはなかなか思えないですが、治療効果を出すためには医師のコミュニケーション力は非常に重要なのだとか。
本著ではそれを音楽に例えていて、「優れた音楽家たるために必要な技術的スキル」も大事だが、「即興で演奏する時に必要な(コミュニケーション)スキル」も、良い演奏を作るには重要、という表現はとても腑に落ちました。
本著を読んでいて思い至ったこととして、医療とは全く関係のない業界で仕事をしている私ですが、バタバタしている時に、主題になかなか辿り着かない(と自分が感じるだけなのですが)話をされると、つい「つまりこういうコトですか?」と割って入ったりしているなぁと。。
血の通ったコミュニケーションができる人間でありたいものです。
ちなみに、本著の中に「おおざっぱにいえば、私の性格はB型なんです。教師に向いた性格ね。でも、糖尿病の場合はA型でないとだめなんです。」という記述があったんですが、アメリカでもB型って几帳面さに欠ける存在だと思われてるんでしょうかね。。
翻訳については、訳者も医師と医療翻訳者のタッグということで読みやすかったです。