近年、米国の若者たちの間で、「社会主義」がブームになっている。自由と競争の国で、何が起こっているのか?米国の政治、経済、社会の地殻変動を読み解く書籍。
米国人を対象にした2020年の世論調査によると、社会主義に好意的な人は、前年の36%から40%に増えた。「ミレニアル世代(1981~96年生まれ)
...続きを読む」「Z世代(1997~2012年生まれ)」では約5割、2人に1人は社会主義に好意的であった。
ミレニアル世代とZ世代の特徴は、次の通りである。
・人種面で多様。白人比率が低下している
・「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」運動や気候変動ストライキなど、抗議行動に積極的に参加している
・ITのリテラシーが高く、SNSで不特定多数とつながっている
・国民皆保険や貧困対策、所得再分配などの政策を支持する
最近の米国の社会主義の源流は、2011年のウォール街占拠運動にある。当局の取り締まりにより、この反格差社会運動は短命に終わった。だが、この時のミレニアル世代を中心とした参加者が、米国の民主社会主義や社会主義の基盤となっていく。
2016年の大統領選挙の時、民主党候補者のバーニー・サンダース陣営で活動した人たちが、翌年、「ジャスティスデモクラッツ」を結成した。この政治団体は、擁立する候補者に、大口の献金を受け取らず、「進歩的」な政策・立場に同意することを求めている。
ジャスティスデモクラッツが擁立した候補者の1人が、アレクサンドリア・オカシオコルテス(AOC)だ。彼女は、ヒスパニックで労働者階級出身。大口の献金を受け取ることなく、2018年の民主党予備選挙で同党の重鎮を破る。今やサンダースと並び、AOCは米国の民主社会主義者の「顔」となった。