タイトルからは南北朝時代における北朝天皇家を取り上げた本かと思ったが、それだけでなく、むしろ南北朝合一後の儀礼的昵懇関係をベースとした北朝(系)天皇家と足利将軍家との関係に重点を置き、中世を生き抜いた北朝天皇家の生命力を描写している。
室町時代の北朝系天皇は、高校日本史などでの存在感はなきに等しいの
...続きを読むで、光厳から後柏原に至るそれぞれの天皇の個性豊かなエピソードをたくさん知れて、天皇好きの自分としてはとても興味深かった。持ちつ持たれつの儀礼的昵懇関係を基調としつつ、それぞれの天皇と将軍の個性や相性によりお互いの関係性は様々であり、人間らしくて面白く感じた。天皇家と将軍家の関係性の変容の契機ともなったという、応仁の乱の最中に天皇家と将軍家が同居していて、夜な夜な宴会をしていたというエピソードが特に印象的だった。また、後光厳流と崇光流の分裂やそれに伴う伏見宮家の誕生という事実について、ほとんど認識していなかったので、勉強になった。