作品一覧

  • 万葉集の起源 東アジアに息づく抒情の系譜
    4.7
    日本人は、恋をしたり、愛する人を失ったりすると、その心を俳句や短歌に詠んできた。それは最古の歌集『万葉集』以来、受け継がれてきた心性だ。『万葉集』では、人を恋しいと思う気持ちはどう歌われているのか。さらに時代を遡ると、それらの歌のルーツはどのようなものだったのか。著者は、今も歌垣で恋歌を、葬儀で挽歌を歌う中国少数民族の歌文化にその原型を求め、日本人の抒情表現の本質を明らかにする。
  • 万葉集の起源 東アジアに息づく抒情の系譜

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    「万葉学者、墓をしまい、母を送る」で上野誠を知って以来、なんとなく万葉集について興味を持ち始めた令和二年です。今まで国語教育の中でしか触れてこなかった方面。上野先生の「万葉手帳」とかをパラパラしながら飛鳥の風景写真と素朴でむき出しな感情表現にまみえてみると、なんでこのような文学が公式なアーカイブとして残っているのか、無性に気になり始めました。で、本書の題名「万葉集の起源」を手に取った次第です。これが、滅茶苦茶、面白い。令和という年号の決定の際も、中国の文献からの言葉ではなく国産の文学から生まれた、という喜び方がありましたが、この新書は、そもそも万葉歌の起源は東アジアの文化風習「歌垣」である、と

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    2020年10月11日
  • 万葉集の起源 東アジアに息づく抒情の系譜

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     万葉集を研究する際にいろいろな立場がある。これを文学作品として捉え、そこに作品論や作家論を近代的枠組みに当てはめて考えるものである。そこには比較文学的な視点もあり、中国文学からの影響を読み取る方法は戦後以降の万葉研究の主流である。
     対して万葉を古代的な歌謡の世界と結びつけ、謡いものとしての性格を抽出しようという研究態度がある。ただしこれは万葉以前の文献資料が乏しいため、根拠薄弱とされることが多かった。民俗学的なアプローチもあるが史学的観点からの批判をかわせないでいた。
     そこに加わったのが本書でも取られている東アジア文化圏に現存する歌謡の世界との比較研究である。中華文化圏の周辺部ある少数民

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    2020年08月13日
  • 万葉集の起源 東アジアに息づく抒情の系譜

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    万葉集の起源を東アジアに広く広がっていた歌垣などの習俗に求める。広い視点の万葉集研究。

    中国雲南の少数民族の歌文化を研究する筆者。老若男女が集まり、恋歌を掛け合う歌垣の習俗や葬送儀礼の哭き歌に、万葉集との共通点を見出す。

    彼らの歌には文字はないが、心の機敏や揺れの表現は万葉和歌の抒情表現につながる東アジア共通の文化であると筆者は主張する。

    万葉集で良く見られる男女の恋歌のやりとり。そして読み人知らずの歌に多い民謡的な性的にもおおらかな表現。即興と定型を交えた歌垣の文化と確かにつながるように思えてくる。歌垣を通じて口承、洗練されてきた歌が、大伴家持や柿本人麻呂、ほか万葉集の選者により、たま

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    2020年07月26日

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