佐藤義之の作品一覧
「佐藤義之」の「「心の哲学」批判序説」「レヴィナス 「顔」と形而上学のはざまで」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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ビジネス・実用
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Posted by ブクログ
著者は「強迫」の概念を失敗とみなしていたけれど、僕としては形而上学的倫理と道徳的倫理に乖離があるのは当然で強迫の概念も形而上学的倫理にだけ適用する分には有効なんじゃないかと思った。
形而上学の範囲では、私は、一人の他者と対峙するとき、エレメントに対する感受性の層で、痕跡としての顔を介して選びを受け完全に受動的に強迫的に応答責任を果たす。そこに第三者が介入すると複数の他者に対して同時に責任を履行する必要が生じ、絶対的他性を持つ他者を他から同へと還元して複数他者への責任を公平に分配する正義への飛躍が生じる。この飛躍は個人の主観および一人の他者との間主観から客観性や知への飛躍に通ずる。
ハイデガーが、現存在が存在の機制の中心に座して対象を道具として目的を以て利用することで意味付与を行い主観的世界を構築するとし、存在を第一原理に置いたのに対し、レヴィナスは、私と他者の非対称的な倫理を第一原理として、倫理のうえに対象化および存在が現出するとした。
実践的な道徳的倫理の範囲では、飛躍後の客観性や理性の層が現場であり、受動性の極である強迫はもはや問題とならない。ここでは、他者の狭義の対象化は避けられず、他者の他者性をいかに保って接するかという実践が問題となる。顔を介して他者を受容し、原理的な正義より隣人との関係を尊重し、その個別の特殊な倫理を守るために普遍的正義を更新し続ける、顔と正義の緊張関係に基づく倫理が望まれる。
Posted by ブクログ
レヴィナスなどの現象学の研究者である著者が、英語圏の「心の哲学」の議論を批判的に検討し、その問題点を解明している本です。
著者は、チャーマーズの議論などを参照して、そこに見られる物理世界の因果的閉鎖性のテーゼを批判しています。著者によれば、意識は記憶をはじめとするさまざまな情報を統合・整序する役割をもっており、主体の生存適合性を向上させることから、進化論的に獲得されてきた可能性があると論じています。こうした考えにもとづいて、「哲学的ゾンビ」のような思考実験にもとづいて意識の物質世界への働きかけを否定する立場に対する反論が提出されます。
そのうえで著者は、「現象的意識から身体行動へ至る道をどう説明するか」という古典的な心身問題をとりあげなおし、メルロ=ポンティの思想を参照しながら、意識にまつわる問題を解き明かすための手がかりを求めます。そこでは、知覚現象は私が積極的に世界へと働きかけることによって引き出した情報であるという見方が提出され、実践との結びつきのなかで知覚をはじめとする意識現象のありかたを考察するという見通しが示されています。
著者は現象学の立場を標榜していますが、フッサールの主張するような「内在」からいっさいの問題を解き明かそうとする立場に固執するのではなく、現代の自然科学における諸成果を参照するなど、柔軟な立場から意識について考えなおそうとしています。本書では直接言及されてはいませんが、実践との密接なつながりのなかで知覚の役割を考えるという著者の立場は、ギブソンのアフォーダンスの考えかたに通じるところもあるような気がします。