野球やサッカーに贔屓のチームがあると、自分の歴史と贔屓チームの歴史が紐付けになっている人は多いと思う。
僕は小3からタイガースファンで、パリーグではブレーブス。理由はサブマリン山田久志がいたから。昭和の野球少年は、一度はアンダースローに憧れた筈。小5の6月、一人でプロ野球観戦したのがブレーブス。そ
...続きを読むの試合はルーキーの山口高志が豪速球でバッファローズを一蹴。…という具合に山口高志の豪速球デビューの1975年はブレーブスにとってリーグ4連覇の初年度で、僕は小5で、ひとり西宮球場で観戦した記憶がまざまざと蘇ってくる。
ブレーブスのリーグ4連覇・3年連続日本一となった、その黄金期を支えた選手をはじめ裏方まで丹念な取材を通じて浮かび上がるリーグの盟主となった理由、皆が慕う西本幸雄の人間力、日本シリーズでは再三にわたり「巨人」に屈し、打倒巨人に向け煮えたぎる思い、同じ西宮市に本拠を置きながら圧倒的人気をほこる「阪神」への対抗意識等…を余すことなく描き切った力作。
登場するのは、福本豊・大熊忠義・高井保・足立光宏・山田久志・長池徳二・ロベルトマルカーノらの名選手にブレービー君のアクター島野修、応援団長 今坂喜好、打撃投手、トランペッター、マネージャー、管理部門の精鋭スタッフ…。
皆が口を揃えて話すのは3点。66年、西本監督が行った「監督信任投票事件」、殺人スライディングで鳴らしたスペンサーの対戦投手のクセと傾向を詳細に書き留めた「スペンサーノート」、日本シリーズで思い知らされたON全盛時代の巨人野球のレベルの高さ。
まぁ何と言っても、猛将 西本幸雄から知将 上田利治の元、誰に言われるまでもなくベテランが率先してモーレツな練習を積み、自己管理を怠らず、群れない大人の集団が黄金期を生んだ。
プロ野球を半世紀近く見ていて最強チームだと確信をもって言えるのは、V9時代の巨人・清原秋山時代の西武・阪急の3球団。共通しているのは、絶対的エース・強力なクリーンナップ・盤石なセンターライン・先行逃げ切りの勝ちパターンの確立。
60年代からのブレーブス通史を通読し痛感したのは、西宮球場から5キロと離れていない距離にある球団との彼我の差。「歴史はあるが、その歴史に暗黒史は存在しても黄金期と全盛期が存在しない」、その球団は本年度300万人を動員。人気と人気が釣り合う時がはたして到来するのだろうか。