教皇フランシスコ
南の世界から
著:乗 浩子
平凡社新書 907
本書で一番印象に残ったのは、教皇が、ドイツ留学中にであったという、アウクスブルク教会の「結び目を解くマリア」である。
18世紀の絵画である「結び目を解くマリア」は、問題がもつれた時にこのマリアに祈ると解決するという霊験あらたかなマリア様である。
ベルゴリオが絵葉書を持ち帰って、複製がブエノスアイレスの教会に掲げられた。
困ったときに、このマリア様に祈るという信仰がアルゼンチン国内に広まることになる。
アルゼンチンの、いや南米初の教皇で、ヨーロッパ以外から教皇がえらばれたのは、1300年ぶりで、初のイエズス会出身の……、といったことが冒頭に書いてあります。南米はもっともカトリックの比率が多い大陸なのである。南米が教皇を出すのは遅すぎた
「貧者のための貧しい教会をつくる」というのはフランシスコの志である
玉座を排し、専用車を使わず、教皇宮殿に住まわず、聖マルタの家で寝泊まりをしている
カトリック教会は、不祥事で穢れたバチカンの中からではなく、外から教皇を選ぶことで、バチカンの改革という、路線を選択した。
フランシスコ教皇と、それまでのベルゴリオをカトリックは区別する
フランシスコ教皇は、2013/03/13~、第266代となる。フランチェスカのアッシジのイメージである。
戦後、これまで保守的なバチカンに契機が訪れる。1962-65の第二バチカン会議(バチカンⅡ)で、社会主義やプロテスタント、国民会議との共存を図りつつ、教会の近代化を進めること、カトリック世界の現代化が始まる。
ラテンアメリカで始まった「解放の神学」は、20世紀後半に始まった宗教改革である
キリスト教の原点に戻り貧しく抑圧された民衆の解放が最大の課題である
「解放の神学」は、アメリカ合衆国の方針とぶつかる
エルサルバドルの良心、グラテマラの春は、CIAなどによってつぶされてきた
政治的な理由で、スペインのフランコなどもアメリカが背後から支援をしてきた
他、南米各国の政治事情を含めての解説が展開される
エキュメニズム 1910年はじまった、キリスト教諸派の再一致運動である、その名はギリシア語の「家」に由来する
他の宗教との融和を含めて、カトリック教会は以前よりは開かれたものになりつつある
目次
はじめに
序章 宗教の復権
第1章 カトリック大陸、ラテンアメリカ
第2章 教皇フランシスコへの道
第3章 バチカンの動向
第4章 アフリカとアジアでふえるキリスト教徒
第5章 民主化を促した教会―冷戦体制崩壊へ
第6章 プロテスタントの拡大とカトリックの対応
第7章 教皇フランシスコの課題と実績
終章 回勅『ラウダート・シ―ともに暮らす家を大切に』―環境・人権・平和
あとがき
参考文献
索引
ISBN:9784582859072
出版社:平凡社
判型:新書
ページ数:272ページ
定価:920円(本体)
2019年03月15日初版第1刷