作品一覧

  • ヨーゼフ・メンゲレの逃亡
    3.8
    1巻1,833円 (税込)
    ヨーゼフ・メンゲレ、アウシュヴィッツ絶滅収容所に移送され、降車場に降ろされたユダヤ人を、強制労働へ、ガス室へと選別したナチスの医師。優生学に取り憑かれた彼は、とりわけ双子の研究に熱中し、想像を絶する実験を重ねた。1945年のアウシュヴィッツ解放時に研究資料を持って逃亡。その後、49年にアルゼンチンに渡った彼は、79年にブラジルの海岸で死亡するまで南米に潜み、捕まることも、裁かれることもなく様々な偽名のもと、生き続けたのだった。そして、その死が遺骨のDNA鑑定によって確認されたのは90年代になってからのことだ。なぜメンゲレは生き延びることができたのか? 彼は、どのような逃亡生活を送ったのか? 謎に満ちた後半生の真実と、人間の本質に、ジャーナリスティックな手法と硬質な筆致で迫った傑作小説。ルノードー賞受賞作。

ユーザーレビュー

  • ヨーゼフ・メンゲレの逃亡

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    アウシュヴィッツに大量に送られてくるユダヤ人をまるでオーケストラの指揮者のように振り分ける-この本では、収容所に到着してすぐ行われる選別を「オーケストラを奏でる」と多くのシーンで表現されている。異次元の残虐行為、すなわち人体実験が描写されている箇所は少なく、その描写も極めて淡白なもの。むしろ「死の天使」の戦後の逃亡劇を通してを持たない怪物ヨーゼフ・メンゲレの卑劣さ・心の惨めさ非常にリアルに伝えている。そう、彼は私たちと何ら変わりもないちっぽけな人間なんだ。戦争犯罪-非常に難しい。戦時下の東欧では市民の手によりポグロムが多発したが所詮彼らは無責任。愛国心ゆえに国家に忠誠を尽くした人は、負ければ立

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    2020年06月10日
  • ヨーゼフ・メンゲレの逃亡

    Posted by ブクログ

    「死の天使」と称されたヨーゼフ・メンゲレの逃亡記。
    史実と文献をもとにした“ノンフィクション小説”

    戦時中に行った彼の非人道的な行為と、逃亡生活中の卑小さ傲慢さが際立つ。(さらにアイヒマンが登場することでその卑小さ俗物さが増す)


    「命令に従っただけで自分は悪くない」
    最期まで狂信者だった。

    最期の章に書かれていたことには胸を打たれた。

    いつの時代にも、メンゲレ(あるいはアイヒマン)のような人物を生み出してしまう可能性がある恐ろしさ。

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    2020年05月14日
  • ヨーゼフ・メンゲレの逃亡

    Posted by ブクログ

    メンゲレのような「命令に従っただけで自分は悪くない」という言い分が通ると思っている卑小な悪、陳腐な悪は決して珍しいものではない。

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    2019年01月07日
  • ヨーゼフ・メンゲレの逃亡

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    悔悟も悔悛もない。同情も共感もできないけど、最後の一文に胸を突かれた。いつ、どんな時代でもメンゲレになる人間は存在している。

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    2018年12月07日
  • ヨーゼフ・メンゲレの逃亡

    Posted by ブクログ

    ノンフィクションのような記録文学。

    積極的に受け入れていた南米を逃亡先に選ぶ犯罪者が多かったのにまず驚く。

    国の施策として研究と銘打ち、個人的趣味での手術をしていた人物と認識していたが、その最後は怯え隠れ卑小な姿で描かれていた。

    頑なに罪を認めず自身を肯定しながら人生が終わったが、それならば逃亡せず法廷で堂々と主張すれば良かったのにね。

    都市伝説のような羽ぶりの良い生活では全くなく、落ちぶれてゆく姿に人間の業のような醜態を見た気がします。

    後味が良いわけではないですが、読んで良かった一冊です。

    翻訳が読みやすくその点も好印象。

    0
    2025年12月07日

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