<どんな本?一言で紹介>
職場や家庭でのやりとりは全てが交渉。
あえて「ノー」と言わせて本音を聞きだす、元FBIネゴシエーターの極秘テクニック。
<どんな人におすすめ?>
営業職、セールスが必要な人。
組織を動かすときのコミュニケーションに悩んでいる人。
リーダーになりたい人。
<読んだら、どんなことが分かるの?>
元FBIネゴシエーターのトップがおくる、現場での交渉経験とスクールでの交渉理論とを融合させた独自の交渉術。
・ 交渉の新しいルール―ハーバード流交渉術を超える
・ 相手のことばをくり返す―ミラーリングで説明を促す
・相手の痛みは、感じるのではなく言語化せよ―ラベリングと...続きを読む 戦術的共感
・相手の「ノー」から交渉ははじまる―拒否の返事はこわくない
・どんな交渉もひっくり返す魔法のことば―要約で相手を誘導する
・現実のとらえ方を変えさせる―「公正さ」という武器の取りあつかい方
・理想の解決策を相手から引き出す―対決から協力に変える“狙いを定めた質問"
・実行すると保証する―重要人物全員の確約を得るには?
・値切り交渉は熱く―中間点で妥協しない戦略
・隠された情報を見つける―交渉を逆転させるブラック・スワンの在り処
<日々の生活、仕事などに活かせるポイント>
1.相手からの信頼を得ながら、情報を収集する
まずは「アクティブ・リスニング(積極的傾聴)」。目標は「相手が何を必要としているのか」を見極めること。そして、要求について相手が少しでも話せるように、安心感を与えること。その時には、交渉をスローダウンさせるのが望ましい。こちらが急ぎすぎると、相手は「話を聞いてもらえない」と感じる可能性がある。
また、相手との絆を形成するには、「ミラーリング」が効果的だ。「申し訳ないが……」と切り出し、相手の言葉をオウム返しのように反復する。そして、しばし沈黙することでその先を促す。相手が言った最後の言葉か、重大な言葉をくり返す。これは、相手からの信頼を得ながら情報を収集できる、確実な手法だ。「ミラーリング」の際は、深く柔らかな、落ち着いた理性的な声を使うと良い。この声で語尾を下げて話せば、「主導権はこちらにある」というメッセージが伝わる。
2.最初は「ノー」と言わせ、「そのとおりだ」に導く
著者が交渉時にすすめるのは、「戦術的共感」。これは相手の感情を理解し、その感情の「裏」にも耳を傾けて、こちらの影響力を増大させることを指す。相手の感情を受け入れた後は、それを言語化し、共感を示す「ラベリング」の出番。「ラベリング」は、人の感情を受け入れることで、それを認証する手段だ。相手の感情に名前をつけて、相手の感情に自分を重ね合わせていることを知らせることができる。
大切なのは、いったん「ラベリング」したら、黙って相手の話に耳を傾けること。また、相手から非難されそうな点については、事前に洗い出しておく「非難の聴取」によって対処するとよい。相手が言いかねない最悪のことをリストに書き出し、相手に言われる前に、先回りして口に出す。これによって、相手の感情をかなり弱められるはずだ。非難をこちらから口にすることで、相手に「そうではない」と言わせやすくなる。
交渉を進展させるためのカギは何か。それは「ノー」「そのとおりだ」と答えさせること。「ノー」は交渉の起点であって、終点ではない。実際にはこちらが主導権を握っているのに、相手に「やり取りをコントロールしているのは自分だ」と錯覚させ、安心感を与えるのが重要だ。
どんな交渉においても、最も甘美な言葉は、「そのとおりだ」。これは「相手の言ったことが正しい」と、自分の意志で公言したことになる。「そのとおりだ」を引き出すには、「要約」が有効。よい要約とは、言われたことの意味を声に出してくり返すこと。そして、その意味の背後にある感情を受け止めることである。つまり、言い換え+ラベリングだ。
3.「狙いを定めた質問」を投げかけることで、こちらの思う方向へ誘導できる
「対決」から「協力」に変えるには、「狙いを定めた質問」が有効。相手からの要求に対し、「どうしたら」「どうやって」など、イエスかノーかでは答えられない質問を返す。これにより、こちらの問題を相手に考えさせるという手法だ。「できない」と突っぱねるのではなく、直接「ノー」と言わずに「ノー」を伝える。そのうえで、相手をこちらの思う方向へ誘導するのが肝。
たとえば巨額の身代金を要求されたとしよう。「どうしたらそんなに用意できるのか」という質問で返せばどうか。誘拐犯のほうが考えを巡らせ、歩み寄るかもしれない。狙いを定めた質問によって助けを求めることで、相手に「自分が主導権を握っている」と錯覚させるのだ。
交渉では、相手の現実を曲げることも時に必要となる。その場合、現実の数字や事実ではなく、相手の感情に的を絞ってアンカー(錨)をおろすとよい。相手の恐れをすべて受け止める「非難の聴取」を行う。
自分がオファーをする前に、それがいかに良くないものかを告げて、感情面のアンカーを固定しよう。アンカーで固定されると、「論理的」で「公正」な事実よりもむしろ、「不合理な感情」に左右されざるを得なくなる。
数字を言う段が来たら、極端なアンカーをおくことで自分の「本心の」アンカーが妥当なものだと思わせるとよい。あるいは、数字に幅を持たせて、あまり強気だと思われないようにする。人は利益を得るためよりも損失を回避するために、より大きなリスクを取る。何もしなければ失うものがあるということを、相手にわからせることが重要だ。
<感想>
仲良くなることはできても、なかなか提案が通らない。そんな経験が多かったので、攻める交渉、戦略的共感ができる考え方や実践を知れるのはありがたい。上記以外にも、「交渉相手の3タイプ」や「ブラック・スワン」など、読みどころが多々ある交渉術の本。