クイア研究に関する本は初めて読んだけども、非常に興味深い。というか、この岩波の思考のフロンティアシリーズは本当に良書が多くてはずれがないので、入門書としてはグー。
さて、クイア。まずは最初に驚くことが、クイア・スタディーズの研究対象が明確には定まっていないという指摘。そして「自己記述的な言葉」とし
...続きを読むて用いるために使用している学者もいるということ。本書においては、「クイア」の明確な定義がなされたときに、クイア・スタディーズの大きな目標が一つ達成されるみたいことまで書かれていた(と思う)。
それとゲイ/レズビアン問題というのは、問題構成もかなり近いのだろうし、基本的に共闘してるんだろうなと愚かにも思っていたのだが、全然そうではなく、むしろそれらを一緒くたにすることはかなり問題であるという点。ここにもジェンダー問題が関わってくるということ。
そして最も興味深かった指摘は、アルトマンによる抑圧の3つの形態ー迫害、差別、寛容。そう「寛容」という文字がここに現れることである。この「寛容」による抑圧を、本書では「差異に価値を十分に与えることなく差異と表向きの共生を可能にするようま差別の一形態なのである。」と記述する(p.25)これはいわゆる多文化主義が批判されるときに孕んでいるレイシズム的な構造とかなり近いものがある気がした。
他にも資本主義との関連、家族形態の新しい模索(映画『ハッシュ!』をもとにしているが、この映画をみなければならない。)など、興味関心あるテーマが論じられている。クイア・スタディーズ、もっと勉強しよう。