う~ん、もう少しおもしろいかと思ったんだけどなぁ。べつに内容が悪いとかいうわけじゃなく、この本が想定している読者層と自分とのあいだにある隔たりが、自分が予想していたよりもずっと大きかった感じ。
おなじサービスやホスピタリティを扱った内容でも、自分はもともと接客業の現場の出身なので、現場レベルでの共
...続きを読む感や納得ができるものがやはり好きなんだと思う。でもこの本は、現場にサービスやホスピタリティの意識を導入・浸透させたい「上の立場」の人に向けて書かれているのだろう。主人公が「現場の人」ではなく、統括的なCS推進プロジェクトのリーダーであることからも、それがわかる。
そのために、サービスやホスピタリティのとらえ方が「大きな枠組み」になっていて、それをストーリーマンガ形式1冊で扱おうとしたために、その枠組みを現場レベルへ浸透させる過程や、現場レベルでの「接客サービス業って素晴らしいと感じる気持ち」の描写まで踏み込むには、分量不足だったんだろう。結果として、あまたあるホスピタリティ本の上澄みをすくったような感じになってしまってる。
なんとなくだけどね、このコミックから「接客業・サービス業」というものへの愛情や誇りがあまり感じられないんだ。なんというか、実際に接客サービスの仕事をしたことがない人が、あるいは接客サービスの経験はあるけれどその仕事に誇りや愛情をあまり感じたことのない人が、頭だけでサービスやホスピタリティをとらえて表現しちゃったようなね、そんな印象を受けちゃった。
だからおそらく、接客サービスの仕事に誇りと愛情を持って、でもうまくいかないことも多くて毎日落ち込んだり苦しんだりしながら現役で働いている人、働いていた人には、物足りない部分が多いんじゃないかと思う。逆に、接客サービスの現場で働いたことがなかったり、働いてもあまり自分で楽しめなかったり、そもそもサービスやホスピタリティといったものに関心がないような人を啓蒙・啓発するための最初の一歩としては、悪くないかもしれない。
ただなぁ、やっぱりなぁ、タイトルに「サービス・マインド」をうたってるけど、ストーリー内での主人公の成長が「サービス・パーソン」としての成長ではなく「プロジェクト・リーダー」としての成長なんだよなぁ。その点でも直接お客様と接するサービスの現場視点ではなく、上から目線要素のほうが強く感じられるのがなぁ、自分にはもうひとつ楽しめなかったのが残念です。
おなじようにサービスをテーマに物語をつけたものなら『サービスマインドをたかめる物語』のほうが現場レベルのマインドには訴えかけるものが多いと思うし、現場へのプロジェクトの浸透といったテーマに物語をつけたものなら『幸せな売場のつくり方』のほうがマインド部分に刺さる。サービスを扱ったコミックなら主人公の佐竹城が日本に帰国したあとの『ソムリエ』のほうがサービスの持つ意味や影響力といったものを感じられると思う。