非正規クライシス 2017/11/20
すでに生涯現役社会になりつつある日本
2018年12月23日記述
2017年11月30日第1刷発行。
2016年から2017年にかけて朝日新聞紙面に掲載された非正規労働に関する記事を大幅に加筆し、適宜最新の情報にアップデートしてまとめたもの。
執筆者は
北川慧一(きたがわけいいち)
朝日新聞特別報道部記者。1981年生まれ。
福島総局、和歌山総局、大阪本社経済部、東京本社経済部を経て2016年10月から現職。
厚生労働省や連合、電機・流通業界などを担当
古賀大己(こがだいき)
朝日新聞千葉総局記者。1976年生まれ。
東京本社経済部などを経て2017年9月から現職。
首相官邸や外務省で経済政策や通商交渉を担当してきた。
澤路 毅彦(さわじたけひこ)
朝日新聞報道局編集委員(労働担当)。1965年生まれ。
大阪本社経済部、東京本社経済部などを経て2013年4月から現職。
広く知られていることではあるが、非正規労働が大幅に増え
(2000万人以上)日本人の収入は減っている。
貯蓄志向も強まり、高額品主流の百貨店業界が苦戦するのは当然という本書の指摘はもっともだ。
日本のパートはフルタイムの6割弱(待遇差)
欧州各国は7割から9割の水準。
本書冒頭で紹介される鹿児島県出身のタケオさん(仮名)のストーリーは身につまされる。
典型的なロスジェネだ。
時代にどれだけ翻弄されるというのか。
正社員登用前提の契約社員に採用され東京での仕事が
はじまった時にリーマン・ショックで解雇とは・・・
コールセンター時代も昼夜逆転の(夜勤の為)生活で
転職活動もままならずとは・・・他にも食品物流のしごとで夜勤をおこなう60歳を超える方のインタビューものっている。夜勤はやはり体にこたえるようだ。
本当は正社員を望んでいるにも関わらず、非正規で働くことを余儀なくされ、厚生労働省が「不本意非正規」と呼ぶ人の割合は17.0%。男性だけ取り上げると4割が現状に不満を持っている。
人口減少の影響を受け、有効求人倍率は2017年に入り、バブル期のピークを超えるほどの高水準が続く。
しかし人員削減にあった中高年の転職は厳しい。
政府は「働きたいと願う高齢者の希望をかなえる」として高齢者の就業促進を進めるが、実際には受け取れる公的年金が少ないなどの理由で生活を支えるために働かざるを得ない高齢者がじわりと増えている。
65歳以上の非正規労働者数の推移
2006年122万人
2008年154万人
2011年168万人
2013年204万人
2015年268万人
2016年301万人
橘玲氏の作品などを通じてこれからは生涯現役の時代と認識してはいたが、
むしろ今すでにそうなりつつあることを認識した。
そして日本という国家の歪みを感じざるを得ない。
また本書は非正規に焦点を当てているため正社員の労働実態に関してはあまり書いていない。
しかしこちらも若手ほど昇給が少なく給料は
もう上がらないと感じる正社員が多くいることは2009年のNHKスペシャルで報道があった・・・
豊かになるためにはまじめに働く必要がある。
必要はあるものの、大きな閉塞感を覚えずには居られないというのが今の私の実感だ。
もちろん非正規の悪い労働条件は改善していかなければならない。
しかし安倍政権は安直な外国人労働者の輸入(事実上の移民)をはじめた。
正直、本書で示されたことすら自民党という政党は行う気が無いということを突きつけられた。
労働者、生活者、有権者の為の政策実現がこれまで以上に求められている。