如月真弘の作品一覧
「如月真弘」の「山本五十子の決断」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「如月真弘」の「山本五十子の決断」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
ラノベ
Posted by ブクログ
赤城という艦が、子供心に嫌いだった。
南雲にも草鹿にも好感が持てない。
そう思っていた。
そもそも、ミッドウェー海戦が大嫌いだった。
まあ、それはそうです。
小学生、中学生ではまだ理解力がいまひとつ足りなかったのです。
ずっと後になって、艦これという名作ブラウザゲームが登場した時、比較的初期に赤城が手に入ります。
彼女がつぶやくキーワードは「慢心はだめ」……。
そう、赤城は慢心からくる油断をしていた。
何しろ、時代は航空母艦の時代に入ったばかりで、赤城は実戦配備された事実上の浮沈艦で、堂々たる大空母で……。
はたから見ると負けるとはちょっと思えない。
けれども、その艦は十全の状態で運用されたとはちょっと言えない……。
そしてミッドウェーはほとんどの歴史家が言うとおり、アメリカ相手の戦争の転換点で、ここから帝国海軍は坂道を転がるように敗戦へと滑り出していったわけです。
しかし、一時期隆盛した架空戦記のなかで、いわゆる「うて、うてーっ」スタイルの小説では、到底カタルシスは得られませんでした。
単に帝国海軍が大勝利、大勝利ー、となるような単純なストーリーでは納得がいかないからです。
そのもやもやした気持ちを全て解決してくれた『山本五十子の決断2』ありがとう!
まず、キャラが素晴らしい。
この世界では、海軍は乙女だけで構成されています。
従って、南雲も、草鹿も、皆十代の少女なわけです。
しかし、しかし。
南雲長官が男性恐怖症で怖がりの水雷屋、これは良いです。
まさかの! 草鹿がw
宝塚風の王子様キャラになっているとは!
う、うわあ……w
しかもこのふたりが指揮する赤城がどうなっているのか。
頭の中が金とピンクできらきら眩しくなりそうでした。
い、いや、これは……これは凄いですよ。
そして勿論注目していたのは、いったいどういう風にミッドウェー海戦が料理されるのか!
主人公の洋平は、なんとかして五十子たちを守りたい、とくに五十子を守りたいと願っています。
(洋平と五十子ののプラトニックな気持ちも双方からうまく伝わらない感じで、やきもきさせられます)。
ミリオタとしては格別深くない洋平は、スマホのバッテリーの容量を気にしながら、史実のミッドウェー海戦について調べます。
その知識をもとに、洋平はある決断を下す。
本作のタイトルは『山本五十子の決断』ですが、重大な決断を迫られるのは、五十子ひとりではありませんでした。
洋平しかり、亀子しかり、後半では南雲も、草鹿も、決断しなければなりません。
いやいや、敵方のヴィンランド海軍でもさまざまな決断が下される。
当然のことです。
戦争では、指揮官の決断が全てを決めるのですから。
(昔、そのもずばり『決断』という大人向けアニメーション作品がありました! これも帝国海軍を扱ったものでした)
海戦がどのように展開するかは言いませんが、なんとか史実の惨劇を回避しようとする洋平のがんばりは爽やかで好感が持てます。
亀子の意外な陣頭指揮のもと、赤城の炎上は避けられたかに見えますが、それでもついに炎上が起こる。ここがクライマックスです。
どうしても史実の流れは変えられないのか?
なんとしても変えねばならない。
彗星が登場するところでは、快哉をあげてしまいます。
中盤からとまらないドキドキに、本をおく事がとても難しくなります。
面白いです!
あえて難を一つ言えば、物語が終わったあとも、実は戦争そのものの結末はわからないという事でしょうか。
はたして洋平はこのまま、海軍乙女たちの世界にとどまりつづけるのか。
五十子たちの運命はどう決着するのか?
たとえば、史実ではブーゲンビル島上空で撃墜された山本五十六と同じ運命を五十子はたどるのか?
しかし、亀子が指摘したように、ここで洋平が知る史実を改変した場合、その後の展開は全く変わっていき、洋平にも予測はつかなくなるわけです。
もしこの先も物語れるなら、今度は戦争の帰結そのものを改変する流れになるはず。
五十子が願う日米の和解は実現するのか、縞野はどう妨害するのか……。
まだまだドラマはありそうなのに、それはわからないままに終わる。
そこになんとなく、もやっとしたものが残ってしまいます。
つまり、ハッピーエンドが完璧ではないのです。
いずれ外伝でいいから、そのあたりについても少し触れて欲しいなあ……そう思います。
Posted by ブクログ
だいぶ前になりますが、会社の健康診断で問診にあたっていたのがかなり高齢のお医者さんでした。
その方が突然言ったのです。
「私はねえ、昔大和に乗っていた事があるんだよ」
その時の夢見るような眸が忘れられません。
戦艦大和といえば、当時世界最大の戦艦でした。
大艦巨砲時代の最後を飾る、偉大な艦です。
そんな艦を擁した連合艦隊は、敗戦後の日本に育った私たちにとっても、限りない憧憬と、浪漫と、多大なる切なさ、そしてやりきれなさがあります。
それゆえに忘れられない。
一昔前に、架空戦記が流行ったのだって、そういう背景があったからでしょう。
そんな連合艦隊を舞台に、繰り広げられるこの物語は、なんと歴史上実在した人物たちが、皆、少女になっているのです。
これにはちゃんと説明があって、この世界……ちなみに日本とは違う、葦原という名前についた列島ですが、その世界ではなんと男は海水に触れると重度の船酔いに似た症状を呈してしまう。
それどころか潮風を吸い込んだだけでも危ない。
また、女であっても、成年に達してしまうと類似の症状を呈してしまう。
だから、少女だけが艦艇に乗り込む事ができるのです。
そこへ、現代の日本から、呉の大和ミュージアムを見学していたはずの高校生がいきなりタイムスリップしてしまう。
なんで、という説明はされませんが、むしろこれは説明しない方がいいでしょう。冒頭でくだくだしい説明をされるとつまらないですから。
主人公同様、読者も力業で作品世界に引き込まれる事になります。
なにぶんにも少女たちですので、随所に(男には)嬉しいサービスがあります。
あ、健全ですよ。健全ですが嬉しいサービスです。
挿絵もありますから、余計に盛り上がります。
本作は最初ネットで連載されていたものですが、改めて紙の本になり、豊富な挿絵がついている。
これだけで、既読の人も手に取る価値があるでしょう。
イラストいいですよ~。
そして素晴らしい生活感。
軍艦といえども、人が暮らす場所ですから、なにがしかの生活感があれば、世界観はリアルに感じられますね。
アジを釣る大会! いいじゃないですか。
海軍乙女たちが愛情込めて磨き上げた真鍮の測定儀。
萌えるじゃないですか。
軍艦に女だと~?、と目くじらを立てる人もたまにいますが、読むほどに、海軍乙女たちへの愛情が湧くはずです。
みんな一所懸命で、山本五十子はそんな海軍乙女たちをまるごと愛しているのだな、と感じられる。
その一方で、五十子も、束(宇垣参謀長)も、なにか重いものを抱えている。
これは、連合艦隊の情報に多少なりとも詳しい読者なら察せられるでしょうね。
そう。どれほど浪漫があろうとも、海軍は政治と無縁ではない。
五十子らが赤煉瓦に呼び出されるあたりは、大筋、史実の通りですが、
なんというか、全てそこが少女になっていると、実際の人物(当然男ばかり)で繰り広げられた時よりも、せつなさが増します。
そして、島野の憎々しさも、女である方が増しますね。
実に素敵な敵役キャラになっています。
おおあの島野をここまで悪女に……。
物語はそういう敵役がいた方が盛り上がります。
さらに、最後はスリリングな脱出行が待っているのです。
詳細はネタバレになりますから語りませんが、ここは脳内で爆音上映しながら読む事をオススメしたい。
(と言うと、察してくれる方は多分多そう)。
ラストのラストには、これまた大東亜戦争当時の日本軍に愛着を持つ人ならば、そして飛行機が好きな人ならば、あーっ、と感動するようなものが登場するのです。
最初から最後まで面白い。
さて2巻はどうなるのか?
続きが待たれますね。