トーヴェ・アルステルダールの一覧
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ユーザーレビュー
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ジャケ買いでしたが、もうこの表紙の雰囲気そのまま。北欧の景色の描写も目に浮かぶようで素晴らしかったです。
薄暗い雰囲気で淡々と進みますが、後半に向けて大きなうねりが出てきてどんどんストーリーに引き込まれてしまいました。
この主人公で三部作作られる予定とのことで、次作も非常に楽しみ。
Posted by ブクログ
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スウェーデン南部オンゲルマンランド地方クラムホシュ。主人公の若き女性警察官エイラ・シェディンが暮らす町である。
深い森や峻嶮な峡谷を、海に流れ出る川のうねりが削る場所。河岸の古い巨大工場の跡地には、麻薬やフリーセックスに夢中になる若者たちの痕跡が残される。
憂鬱になるほど暗く寂しい地方の片田舎
...続きを読むで、13年前に発生した少女行方不明事件。その少女を殺害した容疑で刑務所に入れられた孤独な若者ウーロフ。彼が出所するとほぼ時を同じくして、ウーロフの父親が殺害されて発見される。ウーロフには無実の可能性があり、シェディンは13年前の記憶を彼の出所やその父親の殺人に結びつけつつ、真実を追い始める。
小さな村ゆえの複雑な人間関係。恐ろしいほどの大自然。その中で登場人物たちのそれぞれの陰影の濃い私生活も描かれてゆく。エイラの家族は、認知症の母と、家を出た切り寄りつかない自由奔放な兄。スウェーンミステリならではの生きる重さのようなものが、物語を貫く。ヘニング・マンケルの世界を思い出す。
フィヨルドを抱える北欧の国が持つ自然の美しさと、怖さ。首都ストックホルムとは離れながら、捜査人員が足りないこともあって、都市部からの警察官たちの助けが来る。この事件のためだけの臨時捜査チームのようなもの。彼ら脇役の存在感も併せて物語は立体構造の時空に奏でられてゆく。
後半部になり意外な展開を見せる本書は、川から海へ流れ出す水の流れの如く、警察小説からむしろ、冒険小説的ワイルドさを見せ始める。大自然の豊かさと、時間が与える錆や腐食。
美しくも危険な大自然の営みの中で、いかにも小さく見える人間たちの悲しくも傲慢な罪の存在が見え隠れして、後半は二転三転する真実の深みが主人公エイラを圧倒する。
スウェーデンが犯してきた重大な過ちである冤罪という真実のテーマに取り組んだ作者の意気込みが、感じられる何よりも人間とそのあるべき道を描いた社会派作品としての意義が色濃く感じられる。現実とフィクションのつなぎ目が曖昧なだけに生々しい情感が全巻に漂う。
北欧最大のミステリー文学賞であるガラスの鍵賞受賞作品。そしてシリーズ第二作も完成されているという。そちらの翻訳もまた楽しみだ。
Posted by ブクログ
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北欧スウェーデンと言えば、美しい森と湖。オーロラ、白夜。「魔女の宅急便」に出てくるような綺麗な街並み。
そして手厚い福祉で幸福度も高いが、税金も高い国、というイメージ。
しかし、この小説では森も川もそして森、川を含んだ風景も、美しく綺麗には書かれていない。暗く全てを呑み込んでしまう恐ろしさを森や川、
...続きを読む風景に感じてしまう。その森と川で起こった23年前のレイプ殺人事件。若い男達に、誘うように微笑みながら森の中に入っていくリーナ。他の男達にからかわれながらリーナの後を追う最年少14歳のウーロフ。この事件が、そして森や川が、この物語の全てを支配する。
物語の始まりはウーロフの父、スヴェン・ハーグストレームが殺されているところから。たまたま家に立ち寄ったウーロフが父の遺体を見付ける。しかしウーロフは23年前のレイプ殺人事件の加害者。つい逃げてしまうが、捕まる。読んでいるこっちは、ウーロフが犯人でないことだけはわかる。真犯人は誰か?
この小説は所々で、レイプ犯に対して徹底した嫌悪、憎悪を描いている。レイプは許されない犯罪であり、許してはいけない犯罪でもある。しかし、だからと言って行きすぎな制裁をしてはならない。例えば刑期を終えた者が反省し静かに生涯を終えたいと思っているのに、有らぬ疑いを持ち、声高らかに「制裁を」と強調して叫ぶこと。
或いはレイプ犯の疑いある者を無理やり犯人にする冤罪。この小説は、それも描いている。
何はともあれ、次から次へと目紛るしく変わる展開。次々と出て来る新事実。そして一癖も二癖もある容疑者とその家族。煽る群衆と軽薄な若者達。真面目な普通の女性警部補である主人公と自分に影響がない範囲で主人公に同情的な同僚たち。これ等の登場人物たちは、見方によっては魅力的。
この小説は面白い。さすがスウェーデン推理作家アカデミー最優秀長篇賞、スカンジナヴィア推理作家協会ガラスの鍵賞W受賞作にして、米国でTVシリーズ化も決定している小説。久しぶりに海外のサスペンスを読んだが、後を引く面白さだった。
Posted by ブクログ
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23年前、当時14歳の少年だったウーロフはとある少女を暴行殺人した犯人とされた。
仕事中偶然立ち寄った故郷で、ウーロフはなんと実の父親の死体を発見してしまう。
ウーロフの昔の事件を知る地元の人間は、ウーロフが犯人と信じて疑わなかったが…
その事件から始まり、次々と連鎖して明かされていく事実。
それを
...続きを読む紐解いていく主人公で女性警部補のエイラ。
彼女は私生活では、認知症の母親と悩みながら暮らしていた。
次々と明るみにされていく過去は、現在は、柔らかい急所のようなもので、多く登場する人物たちの生い立ちと家庭の事情とやらだったりする。
事件と日常。
まるで相反するようなこれらが結びつく。
私たちの日常はいつ事件となるかもしれないし、ならないかもしれない。
そして人間というもの、人柄というものの不確かさのようなものも。
そう、仄かに思わせる物語だった。
緩やかすぎず激しすぎずの物語の起伏は、飽きがこず読み進めることができた。
シリーズものかぁ、エイラの今後が気になる気持ちがあるから、続きが出たら読んでみたいかも。
Posted by ブクログ
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14歳の時、少女への暴行殺人容疑をかけられて以来、23年間寄り付かなかった生まれ故郷に、つい、立ち寄ってしまったウーロフ。
待っていたのは自宅で殺されていた父の姿。
主人公は警察官補のエイラ。
ウーロフと同郷で23年前は9歳だったが、地元をよく知るとして捜査に加わった。
当時からから変わらない世
...続きを読む間の事件に対する目、
小さな町で起こったことはすぐに広まり、互いにその見方を同調していく。
本当は、それぞれがそれぞれの事情で家庭で抱えている問題があり、それがこの事件を暗くして、探るにつれて醜く暴かれていく。
エイラは、警察官として捜査を進めるうちに23年前の事件に疑問を感じていく。
それは、仕事としてではなく、自分を覆っている、もやもやとしてつかみとれない衣をはがしていきたいという、欲望の表れのように感じる。
二転三転する展開は、予想している暇もないほどで450ページの物語も長くは感じない。
また、北欧ミステリーの「森と湖、夏の白夜と冬の暗さ」は土台となっているものの、他にみられるような社会問題に対する主張はそれほど強くない。
どちらかといえば、小さな集団の中での同調と排他的意識での息苦しさが、この物語を暗くしている。
真相が明るみになったその時、23年前14歳だったウーロフが犯した罪とされたものは、いったいなんだったのか……この事件そのものが違った意味を帯びてくる。
読み終わった後に、ポツリと残った余韻がいい。
Posted by ブクログ
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