絵がとっても綺麗で、コマ割りも読みやすく、どのカップルの物語も感情移入して読んでしまいました
すごく素晴らしい漫画作品です!
毎巻感想書くのがめんどうなので、最終巻にこの作品の感想をまとめて書かせてもらいます
■作品全体の話
ただのラブコメかと思いきや、コロナ禍以降にはリアルタイムな社会の課題や空気を取り入れるようになり、漫画の雰囲気が少しずつ変わってきました
会社員生活や恋愛、結婚、出産などで直面する諸問題に向き合い、結構骨太で社会問題へも切り込んだ良質な作品となっています!
作品の前半では、コロナのリモート結婚式の話もあり、描写も細やかで、ああこんな時期あったなぁと当時の空気を思い出しました
■主人公の成長(社畜と働き方の問題)
主人公のまるちゃんは、仕事を安請け合いしすぎていました
自分を軽んじられていることに薄々気付いて傷ついたり、それでも仕事ができる自分が好きで、自尊心の根拠になってるから仕事にのめり込んだりと、さらっとですが、ワーカーホリックの心境が見事に描写されてます
治さんと恋愛する中で、徐々に仕事にメリハリをつけながら働くことを身に着けていきますが、最初の頃の「ワーカーホリックが急に時間ができると、何をして過ごせばいいのかわからなくなるエピソード」が地味だけどめっちゃリアルです笑
その後、メリハリをつけながら働き、キャリアを重ねて、中堅社員としてみんなに信頼されるようになったまるちゃん
作品の後半では、妊活してるがなかなかうまくいかない主人公まるちゃんに対して、鬼蔵部長が予定外の妊娠をする展開になります
報告したときの気まずい空気、リアルです⋯
子どもが欲しくて頑張ってる夫婦に限ってなかなかできず、そんなに願ってなかった夫婦がさくっと妊娠するのもあるあるすぎて…
そして、そんな鬼蔵部長の話をこっそり丸ちゃんにしてフォローする諌山部長の声かけが素晴らしい
「丸山さんみたいになりたいそうですよ
いいよって荷物を背負える人になりたいそうです
さすがいいよいいよのまるちゃんですね」
初期の「いいよいいよのまるちゃん」は、社畜で仕事を押し付けられて、軽んじられている「いいよいいよのまるちゃん」でした
同じ言葉が、全然ちがう意味をもって、主人公の時間の経過と成長を感じて、胸にグッときました
まさか社畜のまるちゃんのラブコメ漫画が、こんな社会派骨太漫画になるなんて!
連載を通してすごく化けた作品という象徴的シーンでした!素晴らしいです!
■最先端の男女観①(メインカップルにモラハラ男がいない)
この作品の見どころのひとつが、ジェンダーによる役割の描写です
まず、大前提として、どのカップルもモラハラ男性がいなくて、コンプライアンスがしっかりしてます笑
ちょっと前の作品、あるいは固定観念に囚われたままの作者が描いた少女漫画とか、ラブコメって、道明寺みたいな「暴力的で自己中でモラハラでヤバい男なのにカッコいい枠の男性」がいたりするじゃないですか
そんなのがないのがとても安心して読めました
■最先端の男女観(出産後の夫婦の働き方)
また、女性の結婚、出産によって働き方が否応なく変わってしまう現実に対しても、まだ一般化はしていないけれど、こうなったらいいなという、ある種の解決策が描かれています
初登場時、まるちゃんとの両片思い恋愛では「ダサい男」だったハイジが、妻の仕事のために、育休とるめっちゃ素敵男性になるびっくり展開となりました
ハイジが1年育休をとるのは、まだ珍しいけれど、少しずつは男性の育休が浸透してきているいま、現実味のある展開だと思いました
そして、大変びっくりしたのが、「治さんとまるちゃんの交代でとる分割育休」です!
私は以前働いていたところは、比較的ホワイト企業だったとは思いますが、男性で5カ月の育休をとった人、10ヶ月の育休をとった人などをみたくらいで、夫婦で分割した育休をうまくパズルのように組み合わせて家庭とキャリアを営むという人は見たことがなかったので、目から鱗でした
見たことはないんだけど、現状の育休制度では不可能ではないこの解決策、できたら今後社会で浸透してほしいなぁと切に願います!
■ときたまひっかかった男女観
一方で、最先端のジェンダー描写ばかりかと思いきや、ちょっと気になる部分もありました
買収した大企業のほうが男尊女卑だったり(普通は子会社より親会社、大手企業のほうがホワイトですよね?)、アラフォーの廉次郎がいまどきあり得ないレベルのパワハラ発言連発だったり、そういったところはちょっとリアリティーがなくて、コテコテな展開なのが気になります
また、主人公まるちやんがメンターになるプログラムに挑戦した話では、既婚女性(まだ妊娠しているわけではない)ということで適性があるのに落ちてしまう展開に驚きました
私が以前働いていたところは、既婚女性は妊娠する可能性があるからとプロジェクトリーダーに選ばれないなんてことはなく、実力で男女問わず選ばれて、もし途中で妊娠したらそのときにフォロー体制を組むといったスタイルだったので、子なし既婚女性が妊娠リスクのせいでキャリアを阻まれることって昔のことだと思っていたんです
これっていまの日本でよくあることなんですか?
(絶句⋯)LINEマンガのコメント欄をみると、まだあるようでちょっとショックでしたが、私は現実味を感じませんでした
実情としてはどうなんでしょうか⋯
■リアリティと理想のバランスのよい終わり方
最後の終わり方も、妊娠してハッピー!という単純なものではなかったのが、すごくよかったです!
ハイジが育休から復帰し、みんなが「これで営業部フルパワーでやるぞ!」となり、ハイジが「復帰後は子どもが熱出して迷惑かけることもあるかも」と声をかけるなか、まるちゃんはこのタイミングで妊娠しており、「いいよ!私がサポートするよ!頑張るよ!」って言えなくなってしまいます
その葛藤する苦い様子が胸にぐっときました
妊娠は嬉しいけど、ありたい自分が両立しない、仕事も頑張って子育ても両立するってこんなに難しい現実なんだ、と綺麗事で終わらせない
そんな描き方が素晴らしいです
そして、そんなときのメンタルの持たせ方も、綺麗事じゃないのがよい
「きっと解決しない、でも一緒にいてくれたらいいの」っていうんです
この漫画の中だけじゃなくて、現実の世界でも、女性が仕事と子どもを両立する困難さはスルッと解決することはほぼできなくて、みんな悩みながら取り組むしかないんですよね
それでも、その課題に夫婦で一緒に向き合う姿勢が大切で、それが本当に大切な支えなのだという最後が、夫婦のあり方を問われていて、ガツンと心に残りました
■リアルな会社員生活の描写
ちょい本題から離れますが、会社員生活のいろんな細かい描き方がとってもリアルなところも、この作品の魅力のひとつです
作品が安っぽく見えず、説得力を持たせている一因となっています
最初登場したばかりの三森ちゃん、
仕事をサボりたがりのやる気ない後輩かと思いきや、「本当は仕事を覚えたいのに主人公が仕事を教えてくれないんですけど」と直接言われて主人公まるちゃんはびっくりします
まるちゃんの社畜な側面、仕事を一人で抱え込むことは、仕事を後輩に振れない、人を育てられない、問題点もあるから、決して褒められたことじゃない側面がきちんと描かれています
また、ベテラン草野くんの穴埋めで配属された新人に手こずる治さんの悩みもめちゃリアルです
進捗聞いてもちゃんとした会話にならなくて、それでもさらに進捗を詳しく聞こうとすると「実は手つかずでした」って言う⋯
その理由も明日締切だから明日する予定で、なのに進捗きかれると信用されてないみたいで⋯という
こういう「いや常識ないんかーい」という新人の奇想天外な行動、発想、振る舞い、まじであるのでリアリティがすごいです
若い新人と感覚の差がありすぎてどう指導したらいいのかわからないというエピソード、作者さん会社勤めをある程度の期間しっかり経験されたのではないかと、感じました
■発達障害?の描写がリアル
三森さん、なんとなくasdぽいですよね
失言が多くて、物言いがはっきりしていて、空気よめなくて、でもまっすぐで裏表がないかんじ
普通にならなくていいと言われても、普通になりたいと真剣に思っている様子も、そう見えました
諫山さんに協力してもらって、努力して、コツコツ行動を変えていこうとするのえらいです
諫山さんとしている対話、フィードバックはある意味、療育やソーシャルスキルトレーニング(SST)みたいな役割と機能かもしれないと思いました
対して、鬼蔵部長、adhdぽいような気がします
片付けできない、デスクトップアイコンだらけ、みんなが帰ってるの気付かないくらい過集中、パワーでゴリ押ししてなんとか成果だしてるけど、自宅の部屋は崩壊などなと⋯
発達障害を取り扱おうとしている作品ではないけれど、仕事と私生活の描き方がそう見えて、なんだかその描き方の加減がリアルだなぁと思いました
■おわりに
まあ、そんな感じでめっちゃ長文になってしまいましたが、最初軽い気持ちで読んだわりにめっちゃ勉強になり、いろいろ考えさせられた作品となりました!
作者さん、素晴らしい漫画をありがとうございました!次回作も楽しみです!