川島なお美さんの肝内胆管がん闘病記。
がん再発がわかってから書かれたものだが、必ずや自身は芸能界に復帰すると疑わず、後日談として徹子の部屋か何かで「あのときは大変だったんですよ~」とにこやかに話すシナリオを思い描いていたことが綴られている。
最後の最後まで舞台に立つも、いよいよ容態が悪化してしま
...続きを読むい、その願いは果たされず2015年9月24日に54歳で他界。手記は、夫の鎧塚俊彦さんが川島さんの文章にまえがき・追記・終章・あとがきを加えるかたちで上梓された。
鎧塚さんが「闘病記ではなく、同じくがんを患った方々への応援歌」と書いているが、がん患者の方々のみならず、今を生きるわたしたちに向けられた応援歌でもあり、川島さん自身が自身を女優たらしめんとする自己暗示であるようにも読める。
鎧塚さんが告別式の喪主あいさつで「女優として貫き通してきた人生の緞帳が下りようとしています。女房は拍手をいただくことが生きがいといっても過言ではありません。割れんばかりの大きな拍手で送ってください。アンコールはありません」と述べたのが話題となったが、手記を読むにつけ、川島さんは自分の人生をひとつの舞台であり、女優として演じ続けなくてはいけないのだという気持ちを強くもっていたことがわかる。ここまで意志が強いからこそ女優でい続けたのだと唸るばかりだ。
また、自らのがん腫瘍を「いましめクン」と呼び、がんを患ったのは自分の生活を見直すよき思し召しととらえ、どこまでもポジティブに生きる川島さんの姿勢に胸を打たずにはいられない。
がん報道の前に、鎧塚さんが片目を失明寸前だということで献身的につくす川島さん像を素晴らしいと評価する声が高まったが、手記から、人情に厚く、「ありがとう」の気持ちを忘れない、チャーミングな人柄だと改めてわかり、さらに魅了された。
これは、応援歌であり、わたしたちへの「いましめクン」でもあると思う。
自分や他人と向き合うこと。
日々を輝かしいものにする努力を惜しまないこと。
どれだけ長く生きるかではなく、どのように生きるかが大切であること。
2015年最後に読めてよかった。