AIが既存のビジネスを効率化するだけでなく、その建て付け自体を大きく変えうる技術要素であることが理解できる1冊。一方で、本書に度々登場するウーバーの事例のように、AIファーストな企業であっても、必ずしも圧倒的な競争優位を築いているわけではないこと(マルチホーミングやネットワークのクラスタリングによる
...続きを読む)も具体の事例をベースに学ぶことができ、AIの持つ可能性だけでなくそれを用いたビジネスの事業経済性や戦略の観点からも複合的に学ぶことができる。
AIがこれまで人が行ってきた判断を部分的にでもITシステム化できるようにしたことで、ビジネス活動における人が思考・判断することでしか行うことができなかった業務の時間・コスト的な制約が取り払われる。これによりAI登場以前には選択しえなかったビジネスモデル・オペレーティングモデルの構築が可能になった。この新たな実現可能性と、それがもたらす競争環境の変化をベースに企業の戦略を検討・推進することが重要。
このような市場・社会の変化がまさにリアルタイムで起きている現代において、その中の1プレイヤーである企業やその中の1人である自身の思考・行動を変化させないわけにはいかない。自身の立場においては技術部門だから技術のことだけを、という所属部門の役割に偏った姿勢ではなく、AIのインパクトを知る技術部門だからこそ、現況における新たな戦略の立案とそれを実現するための各論へ介入する姿勢をより強めていきたい。
ちなみにあと書きに監訳者である吉田素文先生の解説があり、これも必読。本書のまとめとして非常にわかりやすい(DXの『ふりかけ』モデル等の吉田節あり)。