元恋人から心ない言葉をぶつけられたことをきっかけに、自分に自信をなくし、恋愛から距離を置いていた波瑠。
そんな彼女の職場に、アメリカ帰りのエリート・津野がやって来ます。
仕事のできる彼のアシスタントとして働くことになった波瑠は、最初こそ距離を置こうとするものの、彼のさりげない気遣いや優しさに少しずつ心を開いていきます。
もともと二人には、職場で再会する前にちょっとした出会いがあって、その時から津野は波瑠の少し頼りなげな部分や可愛らしさが気になっていた様子。
職場で再び出会ったことで、「今度こそ逃さない」とばかりに波瑠へ近づいていくのですが、タイトルから想像するほど一方的な強引さはありませんでした。
むしろ、波瑠が過去の恋愛で傷ついていることを理解し、無理に踏み込まず、彼女のペースを大切にしているところが印象的でした。
年上らしい余裕や包容力を見せながら、それでも一度好きになった相手はしっかり手に入れようとする。
その「優しいけれど逃がす気はない」というバランスが、津野の魅力だったと思います。
仕事中も公私混同せず、波瑠の仕事をきちんと評価しながらフォローするところも良かったです。
こういうオフィスラブでは恋愛面ばかりが目立つこともありますが、今回は仕事の描写もしっかりあり、波瑠が裏方として周囲をよく見て動いていることや、細かな気配りをしていることも伝わってきました。
彼女がただ「ヒーローに愛されるヒロイン」ではなく、仕事面でもきちんと頑張っている女性として描かれていたのは好印象でした。
また、波瑠のコンプレックスの描き方も、必要以上に卑屈になりすぎていなかったのが良かったです。
元恋人に言われた言葉がずっと心に残っていて、自分に自信が持てない。
その傷が簡単に消えるわけではないけれど、津野との関わりを通して少しずつ変わっていく流れは丁寧でした。
ただ、恋愛からかなり遠ざかっていた設定を考えると、津野に対して思ったより早く心を許したようにも感じました。
もう少し警戒したり、自分の気持ちに戸惑ったりする期間が長ければ、波瑠の心の変化にさらに共感できたかもしれません。
とはいえ、津野がきちんと波瑠に寄り添っているので、「この人なら心を開いてしまうのも分かるな」と思える部分もありました。
タイトルには「強引上司」とありますが、実際の津野はかなり誠実。
仕事が落ち着くまでは無理に関係を進めず、波瑠が不安に思うことがあればそれを取り除こうとする。
仕事とプライベートもしっかり分け、職場では節度を守る。
いざ問題が起きれば、曖昧にせずきちんと対処する。
読んでいるうちに「強引というより、めちゃくちゃまともで頼れる人なのでは?」と思ってしまいました(笑)。
波瑠を好きだからこそ積極的にはなるけれど、自分の気持ちだけを押しつけることはしない。
そこが津野の一番良いところだったと思います。
一方で、波瑠と津野それぞれの過去の相手も登場し、二人の関係を揺らす出来事もあります。
かなりクセの強い人物たちではあるのですが、必要以上に重たい展開にはならず、最後まで安心して読めました。
大きな波乱や予想外の展開を楽しむというより、仕事を頑張る二人が少しずつ距離を縮めていく、王道のオフィスラブを楽しむ作品という印象です。
ストーリー自体は比較的王道で、展開も分かりやすいので、刺激の強い作品を求めている人には少し穏やかに感じるかもしれません。
でも、無理にドラマチックにしすぎず、二人の心情や仕事ぶりを丁寧に描いているからこその読みやすさがありました。
無駄に感じる場面も少なく、途中で引っかかることなく最後までしっかり読めた作品です。
そしてラストは、まさにドラマのような締めくくり。
こんなこと現実で経験する機会はなかなかなさそうですが、「一度くらいされてみたいかも」と思えるような展開で、最後までロマンチックに楽しめました。
過去の恋愛で傷ついた波瑠が、津野の優しさや誠実さに触れながら、もう一度誰かを好きになることを受け入れていく。
そして津野も、余裕のある大人の男性でありながら、好きな相手は絶対に逃さない。
派手さよりも丁寧さと安心感が魅力の、王道オフィスラブでした。