「フィードバック」というものの性質を体系的に整理し、どのように向き合うことが望ましいかがまとめられた本。
明確に言語化されているため、既に自分の中で確立されている考え方だとしても、それをブラッシュアップしてくれるものであった。
一方で本書によって、実践的なノウハウを獲得できるわけではない点は少し残念
...続きを読むであった。また、想定読者層として、「フィードバックに心がざわついてしまう」方を設定している傾向があり、フィードバックへの甘受性が高い方には少々、蛇足的な章も見受けられた。
個人的に興味深かった点は、フィードバックを体系的にまとめられている点である。
・フィードバックの役割は、感謝・指導・評価の3パターンに分けられる。
→提供者と受け手で、求められているフィードバックのパターンに齟齬があるとたとえ正しいフィードバックであっても、うまくいかない。
(長年ある社長に勤めてきた、自身を認めてもらいと思う秘書[感謝を望む]へ、社長から具体的にスケジュール管理でのミスを事細かに伝える[指導])
・フィードバックの提供者は、観測した「データ」をもとに彼なりに「解釈」した上で、受け手に「フィードバック」する。なお、「解釈」ステップは無意識的に行われてしまう。
→「フィードバック」の内容を文字通り受け止めると提供者の意図と齟齬が生じうる。
(上司は、部下が購入一歩手前の顧客へのプッシュが不足している現場に遭遇し、「積極的に望め」と伝えたものの、部下は「積極性」を「脅すような営業をする」ことだと勘違いしてしまった)
・人間関係で問題が生じてしまう原因は、ある一人のみねはなく、双方に起因する。また、双方の性格だけでなく、彼らの立場、またその背景にある要素(人・構造・プロセス等)もある。
→問題が生じたとき1〜3歩後ろに引いて原因をさぐる。
0歩:自分(相手)のどこが悪いのか?
1歩引く:自分と相手が組み合うと何がまずいのか?
2歩引く:自分と相手の各々の役割(立場)に原因があるのではないか?
3歩引く:自分と相手の背景にある要素が問題を生じさせてしまっているのではないか?この問題発生システムのどこに改善余地があるのか?
・フィードバックへの反応が人によって異なる(ネガティブになりすぎる・ポジティブに受け取れる)のは、以下の要素が人によって違うため[グラフのイメージ]
1.基調:フィードバック前のポジティブ/ネガティブ具合[原点位置]
2.起伏:フィードバックを受けた際の感情の大きさ[振幅]
3.維持・回復:フィードバックを受けてから基調に戻る前での時間[波長]