主に近代以降の日本の登山史を、さまざまな資料に取り上げられたエピソードを中心に取り上げた一冊。エピソード中心なので、「通史」としては少々分かりにくいところはあるものの、さまざまな組織の資料などをつきあわせて、登山界のそのときどきのムードをうまく再現してくれている一冊。
読んで思ったのは、「日本の登
...続きを読む山好きは世界とつながっているし、日本の山は世界中の登山好きとつながっている」こと。
日本の登山史をひもとくと、それぞれの時代で「内向き(国粋主義的・宗教的・因習的)の力」と「外向き(海外進出・冒険的)の力」が働き、結果的にどれかが勝つ負けるとかではなく、それらが重なり合って今の日本の登山界がある。
代表格はW.ウェストンなんだろうけど、日本の山について海外に紹介する一方、日本の登山好きとも交流して海外への窓口になってる。そういうところはそれ以降も変わらず、終戦ぎりぎりでも「戦争が終わったらもう登れない」と海外遠征登山をしている人がいる。
これを読んでいたのが、北アルプスのテント場だったのですが、驚いたのは北アルプスの結構深いところにも、中国人登山ツアー客とおぼしき人がいることで、それ以上に驚いたのがそんな彼ら・彼女たちのマナーがいいこと。
正直「自分の庭に…」という気持ちが全くないと言えば嘘になる。でも、そもそも日本の山は別に日本人の専有物ではない。幸いにして、東アジア諸国ではそれぞれ別の文脈で登山を楽しむ文化が育ってきている。その時使っていたのは中国メーカーのストックだったし…。
「海外の山」と関わるのか、「海外の山道具・知識」と関わるのか、「海外の山好きの人」と関わるのか。それは人によるんだろうけど、それぞれがつきあえる範囲で「世界」とつながっていくこと、それが「日本の山」をもっと楽しくしてくれるんじゃないか、と思うし、そうしなければつまらない。そういう気持ちを強くした一冊でした。